syuhei

Q&Aのsyuheiのレビュー・感想・評価

Q&A(1990年製作の映画)
3.5
1990年のシドニー・ルメット監督作品。すっかりルメット作品にはまってしもた。

売人が射殺された。撃ったのはNYPDのブレナン、敏腕だが暴力的な捜査でならすベテラン刑事。検事局の上役たちは新米検事補ライリーを捜査にあたらせ正当防衛で幕引きをはかるが私情も絡み彼はこの事件を徹底的に調べ始める。徐々に明らかになる真相はブレナンをはるかに上回る巨悪の存在だった…。

ルメット監督によるクライムサスペンス。主人公ライリーより、ニック・ノルティ演じる暴力デカのブレナンが際立っている。誰彼かまわず差別的で暴力的な言動をぶつけまくる巨躯の白人ブレナンは"わかりやすい悪"の化身だが、彼のような悪人を利用するさらに悪い連中が背後に潜んでいるというお話。

ニック・ノルティはまさに怪演で、胸糞悪いけど人殺しをなんとも思っていない殺伐感が恐ろしい。この人が翌年『ケープ・フィアー』で気弱な弁護士ボーデンを演じたり数年後『ロレンツォのオイル』で息子のために人生を捧げる父オーガストを演じた人と同じとは信じられん。演技の幅が広い実力俳優だ。

ルメットらしい硬派な刑事サスペンスだが、存在感のない主人公ライリーが元カノを売人のボスに取られて云々という部分が無駄に湿っぽくて不要に思える。また、クライマックスシーンで妙にアップテンポの曲が流れて緊張感が削がれる。プロット自体は面白いだけにこの2点がもったいなくてちょっぴり残念。

それにしてもブレナンの口から無尽蔵と思えるほど次々と連射される人種差別表現のレパートリーはすごい。黒人警官に向けて"You're the whitest black man I know."(お前は俺が知ってる中でいちばん白人らしい黒人だぜ)とか口走り、しかもそれが褒め言葉のつもりって、どんだけ侮辱的な表現やねん。

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