きのっぴ

牡牛座 レーニンの肖像のきのっぴのレビュー・感想・評価

牡牛座 レーニンの肖像(2001年製作の映画)
4.0
ソクーロフ監督の"権力者4部作"の1作。
一連の作品同様、権力者の表側を描くのではなく日常を、それも権力を失いつつある時期の日常を描くのはソクーロフらしい視点。

そしてソクーロフ作品にはある種の色彩、トーンがある。
「精神の声」は黄色みがかったトーン、「日陽はしづかに発酵し…」は赤みがかったトーン、そしてこの作品は終始霞がかった青みを帯びたトーンで描かれている。
それはまさにソ連らしいし、権力を失い、健康を失い、最期へと向かうレーニンの姿をじわじわと実感させる映像。

終盤・・・豪邸に住み、医者と介護者に付き添われ、お手伝いに食事の用意をしてもらいながら贅沢なダイニングで食事をするシーン、「人民は飢えているのに私たちは贅沢に耽る。恥ずかしい。没収されたもの・・・」というレーニンの台詞は、その直前に次世代の権力者であるスターリンとの面会で立場の逆転をまざまざと見せつけられていた後だけに、改めて基本理念に立ち返った姿が印象的だった。。。

個人的には、ソクーロフとキェシロフスキは同じような肌感覚があって、最も好きな監督なのだが、共に共産圏出身でドキュメンタリー出身という共通点が影響している・・・のか?
客観性とリアリズムが感覚としてすごくしっくり来る。
きのっぴ

きのっぴ