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牡牛座 レーニンの肖像のいろどりのレビュー・感想・評価

牡牛座 レーニンの肖像(2001年製作の映画)
3.6
レーニンを描いた本作、ヒトラーの「モレク神」、昭和天皇ヒロヒトの「太陽」と、人ならざる悪魔を描いた「ファウスト」の権力者4部作これで全て鑑賞。配信もレンタルもないものもありコンプリートには時間がかかった。

ソクーロフ監督は色に統一性をもたらしていることが多い。「モレク神」では青、「チェチェンへ アレクサンドラの旅」では赤、本作は緑がかった映像でまとまっている。レーニン役は「モレク神」のヒトラー役と同じ俳優とのこと。細長い卵形のヒトラーと、真ん丸い頭のレーニンでは骨格からして全然違うのに、違和感はなかった。この俳優の素顔を知らないというのもあるけど、特殊メイクはすごい。

晩年、脳梗塞で右半身麻痺、認知症の兆しが見え死が目前に迫った状態のレーニンを描く。寂寥感ある終盤の森は、途中から彼岸に渡ったのではと思うほど浮世離れした美しさと儚さだった。晴れ間から聞こえる雷の音に母を想い、レーニンの意識は霧の中へ消えていくのだろう。

牡牛座は、ロシア正教会の聖書では十二使徒の1人である聖ルカのシンボルとされているらしい。聖ルカは、薬剤師、医者、画家、詩人、聖人であり、聖書を執筆したことで知られていて人々から崇拝されている存在のよう。ロシア革命を指導しソ連を建国した全盛期のレーニンはそこまでだったのか?それとも金の子牛のこと?権力に陰りが見えてからのプライベートな一面に焦点を当てているのはヒトラー、昭和天皇と同じだけど、ここまで哀れな姿を描けるのはお国の人だからなのか。ソ連におけるレーニンの評価はよくわからないけど侘しさを覚える作品だった。モスクワのレーニン廟では彼の体は薬品漬けにされて見世物になっている。いまだ完全に死ぬことも許されないレーニンの魂に幾ばくかの想いを馳せた。
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