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牡牛座 レーニンの肖像のSariのレビュー・感想・評価

牡牛座 レーニンの肖像(2001年製作の映画)
3.6
アレクサンドル・ソクーロフ監督特集の35ミリフィルム上映にて鑑賞。
ソクーロフによる20世紀最高の権力者4部作の第2作。ロシア革命を指導して成功に導いた革命家レーニンの晩年の姿を描く。

1922年、ウラジーミル・レーニンは演説中の狙撃で後遺症を患い、モスクワ郊外の森の中の邸宅で療養生活を送っていた。右半身は麻痺しており痴呆が進行して、妻と妹の介護を受けている。
護衛する兵士たちによる監視、党本部からの電話は取り次がれず、手紙の多くは焼処分されている。身体は思うように動かず苛立ちを見せ、激しい感情も露わにする。ある日、見舞客のスターリンが訪れる。二人は対話をするが、どこか噛み合わないままに別れる…。

外界から隔離された権力の残像のようなものが、館全体を覆う奇妙な空気の中で蠢いている。ソクーロフがカメラを持ち撮影した靄がかかったような深緑の映像と耳元に降りかかってくるような音響が作り込まれ、死に向かうレーニンの意識を反映するかのよう。
この世かあの世か判別がつかない世界を彷徨うような幻想的な森で年老いた妻とのピクニック・シーン。
フィルムのカタカタと回る音、ブチブチとノイズが入る画質も味わい深く、貴重な映画体験であった。

2023/05/27 名古屋シネマテーク
アレクサンドル・ソクーロフ特集
35ミリフィルム上映にて
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