囚人13号

牡牛座 レーニンの肖像の囚人13号のレビュー・感想・評価

牡牛座 レーニンの肖像(2001年製作の映画)
4.0
フィルムに焼き付いた光に重要性が孕む本作がDCPではなく、どこか生々しくも回顧趣味を感じる35mmという形式で上映されたことに深く感動した。

権力者の身体的衰退を残酷に捉え続けるカメラ、日光と自然照明がフィルムの感光を慫慂しつつ森林公園/庭/屋内/部屋を往来しながら時空が暴力的に飛躍する。
画面が不健康なまでに緑がかる瞬間は心理作用によって安堵を齎すはずの色がグロテスクに過激化し、しかし不自由の中でただ死を待つ男が静謐でしかない大自然に囲まれる瞬間のシニスムは正しく光景の不一致から成り、また時間感覚が狂っていく。

そして自分を見ている傍観者たち=常に気にかけている者≒支持者が完全に画面から姿を消しレーニンが完全に一人取り残されたとき、もはや彼の声は虫の羽音/家畜の鳴き声と同等の価値へ堕落し、力を失った権力者に残された唯一の権利こそが"死"なのである。
囚人13号

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