ぽん

おつむてんてんクリニックのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

おつむてんてんクリニック(1991年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

アルヴィン・サージェントはこんなコメディも書いてたのかとビックリして視聴した作品。

患者のボブをビル・マーレイが演じていて屈折した陰キャのクセの強さで笑わせてくれる。ある意味、想定内な安定のウィアードさなので、むしろ精神科医のリチャード・ドレイファスの壊れっぷりの方が面白いかも。鼻にかかった嫌味ったらしいセリフ回しや、目が笑ってないひきつった笑顔がなんとも可笑しい。
ボブを車から放り出すとき「Get out of the car!(降りろ!)」と叫ぶのが「ゲラーララララー」にしか聞こえないの爆笑。

人はみな弱さを抱えているし何かのきっかけで壊れてしまうこともある。逆に病んでいる人も心優しい人々との交流で癒され回復する可能性を持っている。アルヴィン・サージェントの描く人間観が私は好きだ。

医者はボブのことをやたらと「あいつは患者だ」と言い、一線を画そうとし遠ざけようとする。でも医者の家族たちは「変わってるけど楽しい人」と受け入れもてなす。ボブの方もそういう扱いを受けて緊張が解けてどんどんマトモになっていく。逆転劇のコメディだからそういう流れになるのは当然なんだけど、でも何かそれ以上に作り手の想いがにじみ出てる気がしてしまう。
最初のうちはメンタル病んだ人を笑いものにするのかーとちょっとだけ痛みを感じたけど、違いましたね。眼差しが優しい。
医者の家に泊めてもらったボブがベッドに横になってティッシュペーパーの束を取り出す。いつも持ち歩いていて、ドアノブに手をかけたりエレベーターのボタンを押すときに手を触れないように使ってるティッシュ。これをじっと見つめたあと「もう要らないや」って感じでポイっと脇に捨てる。このシーンちょっとウルっときてしまった。

作品全体としてはなんてことなくコメディとしてそこまで突き抜けていないけど、この優しさはオススメしたい。

おまけトリビア・・・編集がアン・V・コーツってビックリした!「アラビアのロレンス」(1962)でアカデミー編集賞とった人です。
ぽん

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