矢野竜子

彼女たちの舞台の矢野竜子のレビュー・感想・評価

彼女たちの舞台(1988年製作の映画)
4.4
真実(現実)VS嘘(虚構)の一本勝負165分。
女性のみの舞台の練習と必ずその後に規則的に
インサートされる車窓からの街並みの風景。
つまりは虚構と現実が積み重なって進むのが
本作の特徴だが、
男やテレビやラジオの登場によって
次第に真実や嘘が曖昧になっていく。
レコードをかけた男に女が包丁を持って
迫るシーンは舞台ではないはずだが、
車窓のシーンが続くことで
あれは舞台なんじゃないかと
私たちもそのシステムに組み込まれていく。
後半、セリフで混乱してきた
と何度かあったけどほんそれという感じ。
終盤では扉というフレームの外から
ある出来事が捉えられ
現実と虚構は完全に反転するに至る。
最終的に本作は受刑者とそれを待つ人々に
捧げられるわけだが、
つまり真実はその人々に拠り、
舞台も彼女たちにとってはもはや嘘(虚構)
ではなく真実(現実)ということではなかろうか。
何かを作り上げるためには破滅と懐疑は必要
というようなセリフが頭にこびりつく。