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リリイ・シュシュのすべてのKHのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
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今まで観てきたどんな映画より、ずっと密度が高くて夢の中に閉じ込められたような映画。
実際に起こる出来事も、それに伴う内面もどこまでがリアルでフィクションなのか分からない。
現実と虚構との遠近感が失われ2次元で表現されているが故に、その立体感の無さに酔う。
もはやこの映画にどこまでリアリティを求めるかなんてナンセンスだと思う。
こんなリアルなんてどこにも無いけど、あの時代に対してみんなが持ち合わせてる特有の原風景を映画にした作品。
ちょっとだけ成長して、あの時よりちょっとだけ達観できるようになった今の自分があの時代を懐かしむように美しいなんて味気ない言葉で表現したら、
当時の自分に絶対に怒られるし嫌われるだろうけど、あの時代の残酷さの影に隠れた瞬間的な美しさから目を逸らす事は出来なかった。あの時代に自分たちはいつまで支配されるんだろう。
この作品は理屈に当てはめて解釈しようとするほど実質からだんだんと遠ざかっていくし、実はすごく簡単なことかもしれない。

当時は今みたいなオタク文化がなくて(というより初期段階)、自分の好きなものをファッショ的に使いこなすほどみんな器用じゃないし、
狭いコミュニティの中でお互い知識を深めあっている時代だったと思う。
そんな10代にとって、この重大な秘密があたかもこの世界と共有されているような錯覚さえも覚えるほど閉鎖的な中で、唯一の救いを求めていたものさえも、最後汚されてしまうのか。
実際に会ったとしても、マウントの取り合いになってしまうのも、あの時代のリアルだと思うと悲しい。
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