おさるのじょじへい

リリイ・シュシュのすべてのおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
3.9
こんなにも田園風景が美しい映画は他にはない。
それなのに、ああ、それなのに…。
どうしてこれ程までにむごいのでしょう。
見るのもとても苦しくなるけど、では、むごいテーマは映画にしてはいけないのでしょうか。そんなことはないはず。
自分が知らない世界を知らせてくれることこそが、映画の仕事だと思うのです。

一番の加害者は大人たちだと思いました。
子供たちの変化にも気付かず、SOSを出されても見て見ぬふりをしてしまう。劇中の大人たちが立ち上がっていれば、救われた少年少女が何人いたことでしょう。

それと…。
津田や久野の性的なシーンに、どこかワクワクしながら見た殿方も多いのではないでしょうか。でも彼女たちの心の傷は、そこはかとなく深い。とても男性っぽい性格の自分でも、彼女たちと同じ目に遭ったら、津田と同じ結果になっていたかもしれないと感じます。
あの種の傷みは、なかなか殿方には伝わらないのかもしれません。それでも津田が選んだ手段、久野の乱れた坊主頭の意味が少しでも伝われば、似たような事件が減るのではないかと考えます。
そんな観点からしても、この重いテーマを映画で取り上げた意味があるのではないでしょうか。

ドビュッシーの美しいメロディと、写真のような淡い映像美、
自分の思春期を呼び起こすような青くささの如実さに心が救われました。