10年ぶりに見てしまった。夕暮れから、どんどん薄暗さの広がってゆく部屋で、しばらく使っていなかった感覚の一部が研ぎ澄まされて、切り刻まれていく。
忘れていたはずの傷、あの頃から増えつづけてきた傷、それらが疼いて痛い。そしてまた、私が誰かにつけたであろう傷のことを思う。痛すぎる。生きていることは傷しかつかないといっても過言ではない。傷をつけるために人は生きている。(絶望的な気分)
時代や場所を問わず、14歳や15歳の少年少女はいつもあの鉄塔が見える田園風景の真ん中にひとりきりで佇んでいるものなのだと思う。そう思うとみんな同じ痛みの中にいるのにね。それでいながら傷つけあってる。そうでもしないと漠とした空白に耐えられないんだろう。
小さくありながらも無限に広がる、そうした田園風景のなかにいることは、乗り越えるものでもなんでもなくて、気づいたらそことは違う景色を見ている。気づけば今の年齢になっていて、剥き出しの何かを見ることもなくなり、それに伴う痛みも薄れてきた。それでも、、今も自分のなかに永遠に佇む無表情の14歳の自分がいるんだよ…。そのことに思い当たってしまい、どうしようもない。私はこのさき誰かを、あるいは自分を救うことができる?