たりほssk

ダンケルクのたりほsskのレビュー・感想・評価

ダンケルク(1964年製作の映画)
3.7
第2次世界対戦中、フランス北部ダンケルクに近いズイドコードの海岸には40万人近い英仏連合軍の兵士たちが、独軍に追い詰められていた。1940年6月初旬の土曜日、自分の部隊からはぐれてしまったジュリアン・マイア軍曹は、イギリス陸軍を撤退させるイギリス海軍の艦船に便乗しようと渡り歩く。その過程で様々な考えを持った兵士たちや、避難せず自宅を守ろうとする女性ジャンヌに出会う。前半はジュリアンがズイドコードでの戦争風景を傍観的に眺めるような視点で描かれる。執拗なドイツ軍の空爆は恐ろしかったが、おしゃべりを中断しながらそれをよけたり、まるで物を運ぶように死体を運んだり、戦争自体がもはや日常と化しており、兵士たちは士気がなく、もはやあきらめたというような絶望感が漂っていた。これはこれでとてもリアリティーがあると思った。
そして後半戦争の恐ろしさがさらに加速していく。ジュリアンは結局イギリス艦船に乗ることはできず、ジャンヌと結婚の約束をして、日曜日の午後彼女を待ち受けるのだが……
ジュリアンは常に飄々として感情を顕にしないけれど、戦禍に巻き込まれていく様を見るのは辛かった。どうにもならない、ど うにもできない焦燥、不安、絶望が無情感とともに淡々と描かれていた。
結局はこうなることが、最初からわかっていたような気もしてラストは何とも言えない虚無感で一杯になってしまった。
これはシニカルにフランス兵の悲劇を描きながら反戦を訴えるという非常に独創的な作品なのだと思う。台詞も一つ一つ重みがあり、考えさせられた。
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