ダイアー教授

真夜中のカーボーイのダイアー教授のレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
5.0
題:ブロークバック以上の関係
製作:1969年、アメリカ
監督:ジョン・シュレンジャー
脚本:ウォルド・ソルト
原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒーの同名小説
CAST:ダスティン・ホフマン、ジョン・ボイト

原題は『Midnight Cowboy』…邦題は『真夜中のカーボーイ』
「男ってほんとにいいもんですね」と言ったかは知らないが、水野晴郎さん邦題の考案らしい。
※Cow=カウをCar=カーとして都会的な感じを出したかったとのこと。

テキサス出身のカウボーイとNYのホームレス…2人の男の不思議な絆の話です。
カウボーイが出てきて、男と男の絆を描いた映画は『ブロークバック・マウンテン』がありますが、それを超えた関係だと思います。

本作、3つにまとめてレビューします。

1.二十日鼠と人間との共通点
スタインベックの「二十日鼠と人間」がベースとなっているらしい。
言われてみると共通点がある。
・2人の男の話:定職がなくて、片方は長身でおつむが弱く、片方はチビで頭がキレる。
・ネズミに関するモチーフ:リコは“ネズ公”と呼ばれる。飲食店や路上でネズミのおもちゃで遊ぶキモイ女(Freaked-Out Lady)が登場する。
・展開:夢が叶いそうになるが、寸前でトラブってしまう。
なるほど…

2.ウォルホールとの繋がり(私見)
ジョーとリコをパーティーに誘うアート集団はウォルホールの「ファクトリー」がモデル。グレーテルやウルトラ・ヴァイオレット等、ファクトリーメンバーが登場する。
ウォルホール本人も出演するはずだったが、直前に銃撃されてかなわなかったとのこと。

私だけだろうか…ファクトリーの連中は、軽薄で、浮ついて、刹那的で、どこか“いけ好かない”感じがするのだ。
同じアメリカでも、ジョーの古郷のテキサスにはこんな輩(ヤカラ)はいないし、
NYのど真ん中に暮らしているけど、食うや食わず生活のリコには無縁の世界だ。
当時のアメリカのステータス格差への皮肉が込められているのではないかと思う。

3.音楽
オープニングで流れる主題歌はボブ・ディランに発注予定だったらしいが、かなわずに
ニルソンの「うわさの男」になったそうだ。
アゲアゲな曲である。
“Going where the weather, suite my clothes”
という歌詞が、劇中にNYで寒い思いをした二人が、温暖なフロリダに行くことを思わせる。

テーマ曲はハーモニカとドラムのサゲなメロディー。歌詞もない。
失敗続きのNYでの生活、街を寂しく歩くシーンとエンディングで流れる…
何か長渕っぽくていい。
都会で、人の冷たさを味わったり、挫折したり…
でも、人の温かさも感じたり、這い上がるきっかけを手にしたり…
そんな思いをした人には沁みる曲ではないだろうか?

真冬の寒さに凍える2人がフロリダを夢見てオレンジジュースのCMソングで踊り出すのは滑稽であるが、ちょっと泣けてくるシーンでもある。
歌詞は“Orange juice on ICE is NICE”なのだ。