シンタロー

真夜中のカーボーイのシンタローのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
3.9
ジョン・シュレシンジャー監督によるアメリカン・ニューシネマの名作。ニューヨークに憧れてテキサスからやってきたジョー。なんの当ても伝手もなく、頭が悪くてまともに働く気もないジョーにあるのはルックスの良さ?だけ…それも本人が勝手に思い込んでるだけのナルシスト。都会の女達に相手にされるわけもなく、孤独感と過去のトラウマに苦しめられる。そんな時に出会ったリコは片脚が不自由で病弱な胡散臭い男。案の定騙されるジョーだが、リコは返す金もないホームレス。罪滅ぼしにリコは、ホテルを追い出されたジョーを自身の寝床である廃墟に住まわせ、ジゴロのマネージャー役を買って出るが…。
最初は二人のキャラクターに全く共感出来なかったのですが、ジョーの為に料理して、洗濯して、靴を磨いて、散髪して…尽くすリコとの関係に次第に友情?愛情?が芽生えてくるのと同時にジョーが人間的に成長していく辺りから、二人を見守っている自分がいました…リコが病に冒されていく後半は辛かったな…。
アンジーの父として有名なジョン・ヴォイトは31歳の本作が初主演という遅咲きな役者。鼻と口元が独特で、決して正統派イケメンとは言えませんが、長身でスタイルが良くて、後半は芝居がどんどん良くなってました。何となくヴィゴ・モーテンセンのような雰囲気。「卒業」とは別人のような演技と風貌のダスティン・ホフマン。少し過剰な感じはするものの、コミカルさとシリアスさが絶妙。ジョーを見つめる眼差し…普通の友情物語としては語りきれない深みを持たせていて素晴らしい。あと、この時代特有の陰鬱で荒廃した雰囲気…闇を抱えた人々、ゲイや売春の描写等々、なかなか興味深いものがあります。個人的には、しんどそうなリコの汗を、ジョーが服をまくって拭いてやり、シラミくらいもらってやると、クシで髪をとかしてやる場面なんかジーンときてしまいました。切ない物語ですが、時々見返したくなる、思い出の多い作品です。
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