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犯人に告ぐのtjZeroのレビュー・感想・評価

犯人に告ぐ(2007年製作の映画)
3.6
6年前に幼児誘拐犯をとり逃し、地方署に飛ばされた刑事(豊川悦司)が、県警本部に呼び戻され、再び起きた連続誘拐殺人事件の捜査の指揮を執ることになる…。

まあとにかく、トヨエツの眼力(めぢから)の威力を圧倒的に感じさせてくれる映画である。

過去の失敗への悔恨、己の子どもに向ける親愛の情、そして何よりメディアを使って犯人に向かって語りかける際の「絶対捕まえてやる」という執念…真摯で陰影深いそのまなざしの強さ。

このキャメラをにらみつける視線のパワーだけで、充分に作品が成立してる。
あとはその推進力の足を引っ張らずに、引き立てるために細部を整えるのみ。

音楽は派手すぎず、嘘くさい感動もなし。
役者陣のアンサンブルも抑制が効いていて、バランスがいい。主人公を妬むイヤ~な二世警視の小澤征悦、支える頼もしい笹野高史、手は差し伸べるが保身の方が大事な上司の石橋凌…周りが皆、出過ぎずそれでいて印象は程よく残す。

太い幹であるトヨエツの眼力を活かし、枝葉となるアンサンブルや音楽、撮影に照明や編集を整え、2時間という長さを感じさせずに原作をスクリーンに投影した。
余分なモノをそぎ落とした、立派な樹が立ってます。植木職人=映画監督(瀧本智行)のたしかな仕事ぶり。
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