こたつむり

犯人に告ぐのこたつむりのレビュー・感想・評価

犯人に告ぐ(2007年製作の映画)
3.1
♪ コールアンドレスポンス 
  生命 死刑宣言!

冒頭の新宿駅周辺のロケは圧巻。
許可が下りるとは思えないので、たぶん隠し撮りなんでしょう。本物の雑踏が緊張感を高めるんですよね。それはみなとみらいの場面も同様。虚実混ぜ合わせた見事な編集でした。

だから、これは間違いなく傑作。
…なんて思いながら前のめりだったんですが。が。がががが。次第にテンプレート的な演出が増えていき、気付けばフォークボール並みの急降下。脱臼しそうなくらいに肩が下がりました。

特に最後の最後が…うーん。
鑑賞後に知りましたが、監督さんは「余韻を残すために入れた」そうなんですけど…えー。ネタバレになるんで深くまでは言及しませんが…あれはない。100%ない。何かを勘違いしているとしか思えない。

そして、これも鑑賞後に知ったのですが。
本作を仕上げたのは瀧本智行監督。『脳男』や『グラスホッパー』の監督さんですね。これは、お察しです。知らずに臨んでしまった僕が悪いんです。

ゆえに配役に寄せない演出も納得ですね。
豊川悦司さんはツボにハマると大爆発するんですが、そのスイートスポットが狭いんですよ。

でも、本作にはそこに配慮は無く。
役者に丸投げした感が強く、折角の盛り上がる場面もテンションが上がりません。もっとオンとオフをはっきりさせた感じが欲しかったです。

あと、脚本も微妙なところでしたね。
今から16年前の作品とは言え、当時は既にネット文化が花開いていたわけで。双方向メディアを取り込まないと“劇場型捜査”もお遊びにしか見えないんです。これが20世紀の作品なら良かったんですけどね。

まあ、そんなわけで。
序盤の惹き込み方が巧かっただけに、それ以降の落差で厳しいことを言いたくなる作品。配役も微妙な感じでした。片岡礼子さんや、松田美由紀さんも適材適所だったとは思えず。唯一、小澤征悦さんの存在感が面白かったですけど。

何はともあれ。
臨むならば期待値は低めで。
ツバメのように地面スレスレで行けば楽しめる可能性は高くなると思います。
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