かなみ

眠る男のかなみのレビュー・感想・評価

眠る男(1996年製作の映画)
4.0
ひとつの村を描写するということにおいてこの映画ほど静かで細々としたものは無いと思った。雪が降る日の冷たくて痛い空気に似ている。温かさも哀愁もある。全編を通してショットの美しさが素晴らしい。
怒りや憎しみといった激情はほぼほぼなく、淡々と進められる映画はいっそその淡白さで馬鹿馬鹿しくて冷めてしまうことが多いのだが、この映画は違う。どこまでも暗く掴みどころの無い夜の川のように底知れず、星を寄せ付けない月のように魅惑的である。
湯から登る煙は人の体から抜ける魂である。移りゆく豊かな自然や常に吹く風は日本人の死生観を柔らかく表現する。静かな永久の冬からの脱却と、生命力に溢れかえる木々や緑への再開もまた、円環的な生命の循環を感じさせる。
かなみ

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