otomisan

秘境のotomisanのレビュー・感想・評価

秘境(1949年製作の映画)
3.8
 何のためかウェルカム・アリゾナ映画。というのも通称「迷信の山」の噂の大金鉱脈に立ちはだかった謎の殺人鬼がやっと仕留められて晴れてゴールドラッシュ解禁という次第だから。
 100年前に発見されていながら、開発したスペイン人を皆、山を聖域とするアパッチ族が討伐し、金鉱も採掘した金塊も秘匿して30年、それを再発見したメキシコ人を殺して金を掠め取ったのは通称「消えたオランダ人」ことワルツ。

 既に何百人も死んでいるのに、ワルツをはじめ誰かがこの金鉱を狙って殺し合い、以来1948年までに死者21人だそうな。最後の死者は近2年の死者4人についての犯人本人で、それを倒したのはワルツの孫というから因縁深い。それでも現在殺人者は0人と山はきわめて安全。100年前でも2千万ドルの大金山は未登記だから早い者勝ち。この映画をご覧になった新時代フォーティナイナーのみなさんお越しをお待ちしてます。と、アリゾナ州知事も序文を寄せてくれて太鼓判。

 というわけなんだが、その60年前、立派な悪党ワルツに加えて、彼を誑し込んで金を巻き上げようなんて殺人前科1犯の男女との化かし合いまで始まって、こいつは怨恨含みの泥沼である。
 この男女の機先を制し山のてっぺんで干し上げて虐めてやろうというワルツのサイコっぷりが恋の鞘当以上、女ジュリアも一緒に虐めて男を殺させるまで追い詰める辺りはホラー色に鮮やかだ。ところがそこを襲う1887年5月3日の地震は本当のでき事で、そのときの山崩れで女も死んで坑口も分からなくなる。それでワルツも登記せず仕舞いとなるのだが、ここにおいて、金鉱の話よりもこのワルツは本当はあの悪女ジュリアにそのときも未練があったのか?坑口なんぞはまた掘ればいいのだから。そこのところが中々微妙な描き方に見えてそそられる。

 それから60年、こんな祖父を持ってもへっちゃら、金の在処に迫ろうという孫ワルツの張り切り好青年振りだが、殺人鬼との決闘を制してだんだん熱を帯びた夜の夜中の金脈堀りが狂気の色を帯びていくのが祖父譲りに見えて不気味。
 こいつの道案内で金鉱探しに行きたい手合いにはワルツの上をゆく悪党がよさそうだが、そんな奴でもウェルカム?
otomisan

otomisan