マーくんパパ

郷愁のマーくんパパのレビュー・感想・評価

郷愁(1988年製作の映画)
4.0
戦後、京都から高知・土佐に移り住んだ一家、父は家計の火の車をよそに女と同棲している売れない画家、器量良しの姉が働いて母を助け中学生の弟住男を面倒見ている。お陰で住男は貧しいながらものびのびと田舎の生活を送っている。都会から来た新任先生の姉へのプロポーズと破局、てんかん持ち同級生の死と悲嘆する母親、姉に好意を寄せる村の若い衆やバス運転手、好きでもない嫁さん娶った若い衆と邪険に扱われる嫁さんetc。大袈裟なドラマ性はないけれど戦後どの田舎町にもあっただろう小さな閉鎖社会でのエピソードの数々を積み上げ大人に向かう少年の視点からナイーブに紡いでいく。名脚本家の中島監督ならではの卒がないストーリー。この時代を田舎社会で暮らしたことのある人たちにとっては懐かしい匂いと郷愁に駆られる映画。夜の飲み屋の女給にまで身を落とした姉が追い縋る弟を残してバスで町を去る所で映画は終わるが、姉も住男少年もこの田舎町での出来事をいつしか郷愁を持って振り返る日が訪れることを余韻で予感させられる。てんかん息子を憐れむ砂利人足の母樹木希林、足蹴にされる悲しい花嫁神津はづきに涙じわり。