Wacky55

笑の大学のWacky55のレビュー・感想・評価

笑の大学(2004年製作の映画)
4.0
三谷幸喜 原作、脚本の演劇作品を2004年に映画化。舞台日本が戦争の道へ歩み始め、娯楽である演劇が規制されていた昭和15年、厳格な検閲官向坂と喜劇作家椿との上演許可を巡る7日間の攻防を描いた喜劇作品。

総合評価: 4.0

演出/脚本等: 4.3
シュールなトーンから始まり、思わずどっちなんだよとツッコみたくなるほどの笑い炸裂、シリアスに入って、最後は感動というシンプルな構造プラス流れではあるものの、取調室での2人の掛け合いをメインにもっていた三谷幸喜のこの駆けた姿勢にアッパレ。非常に楽しませてもらいました。

セリフに関しても三谷幸喜ワールド炸裂でしたね。 “お国のためからのお国ちゃんのためからのお肉のため”、流石でしたね。

演技: 4.5
まず何より一番は役所広司と稲垣吾郎2人の見事な掛け合いでしたね。リズミカルな会話のテンポと間がお見事で、見ていて非常に楽しかったです。そして役所さんの演技は素晴らしかったです。最初はポーカーフェイスで非常に厳格ではあったものの、椿と脚本の会話していくうちに徐々に変化しはじめ、ついには我を失いはじめる向坂を忠実に演じた所は流石といってもいいでしょう。個人的には、眉間に皺を寄せる鬼の表情、そして笑いながら怒る演技がものすごく印象的でした。

カメラワーク等: 3.8
大半のカメラワークはシンプルではありましたが、非常に見応えありました。例えば、劇場に足を踏み入れる際のclose upやサークルショットによる向坂が警官役に没頭する場面は、向坂が喜劇にハマりはじめ、無我夢中になっていく彼の心情や雰囲気を見事にサポートしていて、個人的にも結構好きなショットでもあり、好きな場面でもありました。照明に関しても例えば、 2人の表情によるbounce lightingはかなり鮮明で、特に後半からの向坂の表情に焦点をあてたbounce lightingは、喜劇の世界に興味を持ちはじめる一方で(明るい部分)、検閲官という立場に全うしなければならないという(暗い部分)もう一人の彼を描いており、葛藤している向坂の心情、そしてフラグとしても見受けられました。他にも雨が降った日の取調室でのAmbient lightingが非常にリアル感のある雰囲気をつくりだし、またambient lightingによる向坂の後ろ姿がまさに “背中で語る”と思わせるほど、見事な強調さを表していたと個人的に見て思いましたし、そのうえ物語終盤での、向坂と椿のシリアスで緊迫感のある対極の場面では、椿は若干のHigh keyが照らしている一方で、向坂側ではlow keyになっており、この部分に関して個人的な解釈ではありますが、まずここでのhigh keyでは、喜劇に対する熱い思い、そして人々を明るく笑える日々を送ってほしいという椿の純粋な思いを表現しているように見て感じました。一方で、ここでのlow keyの場合は、検閲官というプライドと椿に対して大きな鉄壁で立ち向かう向坂の心情を表現しているのではないかと感じました。そのため、この対局場面でのlighting techniqueはかなり個人的には見応えのある部分の一つじゃないかと思いました。

編集等:3.6
まずカッティングに関しては、無難なカッティングにしたことは個人的には悪くはないなと思いました。音楽に関しては、テーマ曲のメロディがかなり耳に残るほどとても印象的でした。しかし一つ懸念があるとするならば、会話の場面でのBGMの挿入のタイミングがちょっと違和感あるなと思った所がいくつかありました。特に物語の後半。そこがちょっとマイナスかなと個人的に思います。

美術/メイク等: 3.8
オープンセットによる浅草の街並みは非常に見応えがあり、昭和にタイムスリップしたのかと思うほどの魅力さがかなりありました。他にも椿のファッションも個人的に結構好きでした。
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