keith中村

レッド・ツェッペリン/狂熱のライブのkeith中村のレビュー・感想・評価

5.0
 最近でこそ状況はやや改善されたけど、長い間「動いているZEPの映像」を見る手段はこの映画しかなかった。
 
 若い頃最初に観た時は、変な寸劇とか舞台裏のゴタゴタとか要らないから、演奏シーンだけきっちり見せてくれ! と思ったものです。後にジミー・ペイジに憧れてギブソン純正レスポール・スタンダードを買った私としては、何なら、ジミーの手元だけずっと見せてくれ、とさえ思った(教則ビデオじゃあるまいにね)。

 ですが、今観なおすと、そういったものがあることで、これが単なる「ライブの記録映像」ではなく、ちゃんと「映画」になっている。
 寸劇のひとつ、崖っぷちの上にいる老けメイクのジミーが、オビ=ワンに見えますね。
 ライトセイバーも持ってるしね。なんつっても、こっちのライトセイバーは7色に変化するんだから、こっちのが凄い。
 っていうか、本作の公開が実はEP4より前なんだって気づくと、ここの値打ちがぐっと高まる。
 
 寸劇じゃないけど、ボンゾの自宅シーンで、息子のジェイソンがドラム叩いてるのも貴重です。
 まだ小学生ですね。後に父を継いでドラマーになるのさ。
 
 JPJはベーシストのイメージしかないので、本作を観返すたびに、「そういや、キーボードも弾けるんだ」って新鮮にリマインドします。なぜか普段は忘れちゃってるんです。
 本作ではローズとメロトロンを弾いてますね。
(「天国への階段」でメロトロンが入ってすぐ、ミスタッチしてるのはご愛嬌。素材は3日分あったらしいけど、ちゃんとしたテイクは使えなかったのかね?)
 
 ロバート・プラントが歌うメロディーはスタジオ・テイクのハイノートの代わりに低いメロに変えちゃってるところもあって、「やっぱライブじゃ、咽喉をやられないように工夫してるんだなあ」と思う。フレディもよくやってましたね。私、「ボヘミアン・ラプソディー」はライブ盤のメロじゃないと高すぎて声が出ないもの。
 
 ところで、映画を観てて鳥肌が立つ瞬間って、人それぞれにいろいろあると思います。
 私の場合、本作の1曲目"Rock and Roll"のギターソロのところがそれ。とっても「それ!」。
 ローアングルに構えたカメラの前に、ジミーが踊るような足取りでガーッ! と近づいてソロを弾き始める。
 ここは何度見ても鳥肌もの。序盤にこれがあるからまさに「摑みはOK」なんですね。
 
 ライブの記録映像だし、奇蹟みたく偶然撮れた「キマッた画」だと思ってたけど、Wikipediaによると実際のライブで撮影した素材の尺が足りないので、後でイギリスにMSG(マイケル・シェンカー・グループじゃないよ! マディソン・スクエア・ガーデンね!)のステージを再現して、追加撮影したらしいので、もしかしたらここも計算ずくのショットなのかもしれませんが。
 まあ、それでも最高の「絵ヅラ」であることは間違いない。
 
 ギター小僧だった若かりし私には、「スタジオ録音ではギターがオーバーダブされているけれど、それをギター1本でどうアレンジして演奏するのか」がとても勉強になりました。
 "Rock and Roll"は、この映画のサントラ・バージョンをめちゃくちゃ頑張ってコピーしたなあ。
 映画ではジミーがピックアップ・セレクターや、トーンとボリュームをめちゃくちゃこまめに調整してるのも、勉強になりました。
 
 さて、そのジミーと言えば、サンバーストのスタンダード・レスポなんだけれど、この映画でもっと目を引くのは、いわゆる「ダブルネックSG」ことギブソンの「EDS-1275」。
 あ、あとレッド・トップのレスポもちょっと弾いてますね。
 "Moby Dick"で、手に馴染んだ59年型レスポをドロップDにチューニングしちゃったんで、その後の"Heartbreaker"と"Whole Lotta Love"でレッド・トップを弾いてる。
 "Whole Lotta Love"の途中でローディがレギュラー・チューニングに戻したんでしょうか、59レスポに持ち変えるところも映ってます。まあ、再撮もあるし、必ずしも時系列どおりに映画が進んでるわけじゃないから、よくわかんないけれど。
(そのローディって、もしや売り上げを持ち逃げした奴か?!)
 
 何の話でしたっけ?
 あ、そうそう「ダブルネックSG」こと「EDS-1275」。
 ドン・ヘンリーのファンなら白を買うんでしょうが、私はもちろんジミーのワインレッド。
 これね。買ってみてようやくわかるんですが、滅茶苦茶高額な割りにデメリットだらけのギターなんです。
① チューニングがとても大変。
 上が12弦、下が6弦のダブルネックなんですよね。だから、18本もチューニングしないといけない。
② 高さがありすぎるので座っては弾けない。かといって、立って弾くと重すぎる。
 軽量化するために、ギブソンのラインナップではいちばん軽いSGをベースにデザインされてるんだろうけれど、そうはいっても重いですよ。
③ 持ち運びが不便。
 ギターケースが、大袈裟に言うと畳一畳くらいはあるんです。
 電車で自宅からスタジオに持っていくまでで泣きそうになるくらい「ものすごくでかくて、ありえないほど重い」。
 そういや、これをバンドで使ったのは「天国への階段」じゃなく「ホテル・カリフォルニア」だったわ(笑)。
 
 ちなみに「Ⅳ」に入っているスタジオ版の「天国への階段」のソロは、EDS-1275では再現できません。
 「天国への階段」のいちばん高い音は1弦20フレットのチョーキング。EDS-1275はいちおうギリ20フレットまで刻んであるんだけれど、レスポよりカッタウェイが浅いので指が届かないのです。
 だから、本作でもジミーはアレンジを変えてる。
 こっちのソロもかなり頑張って練習したなあ。
 
 今回観なおしたのは何年振りだ?
 20年くらいかな。
 何度観ても素晴らしいライブです。
 あ、でも、"Moby Dick"のイントロのギターがグダグダなのは、いつも笑っちゃう。
 これなら、体調がいい時の私のほうがまだ上手いぞ!

 とはいえ、ジミーはソロの時にメジャーペンタとマイナーペンタを行き来するセンスが物凄くカッコいいんだよね。
 今やアマちゃんでもジミーよりテクがあるギター弾きは多いと思うけど、ジミーの指板のどこを押せばどんな音が奏でられるかの全部を知り尽くしてるかの如きセンスは誰にも真似できません!