「働けど働けど 猶我が生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る」
これ、石川啄木の短歌ですが、本作の肝はこれに尽きるような。
売れない落語家(実力もない?)が、愛想のない口の重い女性、東京に馴染めない関西弁の小学生、引退した喋りべたの野球選手、3人を相手に話し方を教える話。
うまく話せるようになったからと言って、物事が好転するワケもなく、自分の問題に一応決着つけたように見えるのは小学生だけ。
「しゃべれどもしゃべれども」、それだけで全てが解決するほど、人生は甘くないのです。
それでも作中で、OLの十河さん(演じる、香里奈の眉が当時っぽかった)が言うように、なんとかしたいと思うから生徒たちは落語家の家に通ってくるわけで、現状を変えたいと思ったら前を向くしかない。
興行的に成功したのかな?
でも、こういう地味な作品が存在できた当時の日本映画界、なかなかじゃないと思う。
石川啄木にはこんな短歌もある。
「友がみな われよりえらく見ゆる日よ 花を買い来て 妻としたしむ」
つらいことがあっても、小さな喜びが力になる時もある。
自分を励ましながら、とりあえず生き続けること。
大事だよね。