青あお

十九歳の地図の青あおのレビュー・感想・評価

十九歳の地図(1979年製作の映画)
4.4
“どういう具合に生きていったらいいのか、わからないなァ”

19歳の新聞配達員の吉岡は自分の気に入らない配達先があると、独自の評価で✕をつけていく。✕が貯まるとイタズラ電話などで嫌がらせを繰り返し、日々の鬱憤をはらしていた…。
 
閉塞的で理不尽に感じる世の中に対し(少なくとも自分の事は棚にあげて)鬱々とした怒りを募らせ、けっしてそれを表にはださず、卑怯な手段で溜飲を下げる…。
まるで、他者を見下す事で自分の自尊心を保っているかのようにも見えます。

なんて悲しくて鬱屈とした青春なんだろうか。そして、似た様な経験はなくとも、彼の気持ちが理解できる気がするのはなぜなんだろう。

共演の蟹江敬三が多感な青年がもつ潔癖さと対極に位置する冴えない底辺の中年を見事に演じている。彼の存在が大人社会の欺瞞や清潔感の無さを狂言回し的に見せてくれる事で物語がわかりやすくなっているなぁと感じた。

言い様のない歪んだ感情をイタズラ電話で発散する吉岡。
時に「火をつけるぞ」と脅し、違う日には「爆弾をしかけた」と強がってみせる。
粋がってみせればみせるほどに、自分はまだ何者でもなく孤独で小さな存在なんだという事に気づかされていく。

尾崎豊の歌の歌詞を思い出しました。
「自分の存在がなんなのかさえわからず震えている」…まさに、この詩の様な映画でした。
あっ、これ「十七歳の地図」じゃなくて「十五の夜」かな?、まぁ、いいか笑。
盗んだバイクで走りだぁすぅ〜♪
青あお

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