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アラビアのロレンスのiのレビュー・感想・評価

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)
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砂漠の曲線の美しさ。すべての色の鮮明さ。その映像に音楽が表情を与え、映画的表現の豊かさが素晴らしく実現している幸福感のある映画。駱駝に乗ってみたくなる。

でも内容は暗い。戦争によって狂わされる若者。ロレンスが学者だったということ、変わり者だったということ。国にうまいこと利用されやすい人物だったんだろうなあと思う。張り切って頑張ってしまう真面目さとか、本当にアラブのためと思っているような純粋さとか。勉強ばっかしてた若者がいきなりわけがわからないまま、その興奮状態のまま戦争に駆り出されるということのリアルな恐ろしさを感じる。最近(途中まで)読んだセリーヌの『夜の果てへの旅』を思い出す。
全てを利用し尽くして、残酷な現場は丸投げで、その後若者がどうなるかなど全く問題としない国の幹部の老人たち。

頑張ってやってみる、なんかできたかもと調子に乗る、そしたらもう自分の裁量を超えたスピードが出ていてどうにもならずに破滅に向かう。
考古学を学んでいたロレンスがオートバイに乗る。駱駝じゃなくオートバイに乗る。その姿は戦場で銃を扱いはじめたアラブの人々、いきなり国という枠にはめ込まれた人々と重なる。慣れない近代文明を手にしてその大きな波に飲まれていく。それはあの時代の人間がみんな飲まれたのと同じ波だ。
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