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太陽の墓場のmayaのレビュー・感想・評価

太陽の墓場(1960年製作の映画)
4.9
めちゃくちゃ好みの大島渚...
信と武の関係性が、もうヨノイとセリアズそのまんまの構図で、信と武が至れなかった答えにヨノイとセリアズは、時代と、大島渚監督の創作の試行錯誤を経てようやく達したのだと思えて、あのキスシーンの重みを改めて感じた。大島はこの時は意識してなかったようだけど、この2人のホモセクシュアルな関係性についてはインタビュアーに指摘されてたので、直感的に「打破する関係性」として描いたものがそうなっているということは面白い。
花子が、信を助けに行こうとする武に、「あんたに優しくするようなところがあるから信さんはダメなんだ」「甘い」と喝破するのが本当に切なくて好き。歌のシーンとか、大島渚は歌うたいが大好きだけど、「悲しみの数を言い尽くすより、同じ唇でそっと歌おう」じゃん...。武は信に向かってだけ歌ってるんだよ...みんなが茶化す中、2人の間にだけ、線香花火が散るようなコミュニケーションが生まれてるんだよ...
大島渚の映画、あらためて今も含め他に類を見ないほど女性の描き方が上手い。「物言えず殺される女」を「青春残酷物語」に続いて意識的に意志ある生き物として描いている。その上で、レイプされた女の子を突き落として殺すのが花子なのも、不動だった花子の価値観を揺さぶるのが彼女の死であることも、単純なシスターフッドが現実では効かない苦しみ、もっと人としての構造が複雑に絡み合っている様が見て取れる。
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