Mikiyoshi1986

太陽の墓場のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

太陽の墓場(1960年製作の映画)
4.8
1月15日は平穏な松竹映画に突如"松竹ヌーヴェルヴァーグ"を巻き起こしたアウトロー大島渚監督の命日。
今日で没後5年を迎えます。

また、明日1月16日は松竹ヌーヴェルヴァーグを代表する女優・炎加世子さんの77歳のお誕生日でもあります。

国産ヌーヴェルヴァーグの原点となる『青春残酷物語』を生み出した大島は、スカウトした新人女優・炎加世子を主演に迎えて本作『太陽の墓場』を発表。
戦後当時のスラム街であった大阪西成釜ヶ崎(あいりん地区)を舞台とした傑作群像劇であります。

悪臭立ち込めるようなゴミ溜めリアリティーの元、本格的な大阪ロケによってクラストコアの如くズタボロなエネルギーが這いずり蠢く人間たちの業。
そして野性味溢れる美貌でスクリーンを一手に惹き付ける炎加世子の反逆性。

まるでドブネズミが騙し合い、殺し合い、奪い合うように生きる底辺の暮らしぶりは、まさしく高度経済成長に取り残された弱者の無秩序なる実録貧困絵巻です。
ルンペンや労務者や娼婦やチンピラや三国人が凌ぎを削り、
明日を生き抜く為に今日も血液や戸籍を売り飛ばし、窃盗、売春、強姦、恐喝、殺人に手を染める。

夕陽に焼かれるようにそびえ立つ通天閣、大阪城、煙突群は遠くからじっと彼らを見つめ、
隅に追いやられた彼らもまた明日なき明日をじっと睨みつけるのです。
「どないに変わるんや?
もっとマシな世の中になるんか?
ここにおるルンペン野郎はみんなおらんようになるんか?
汚いドヤは消えるんか?」
"映画とは何か"の真髄がここにある、大島渚の最高傑作です。
Mikiyoshi1986

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