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太陽の墓場のRのレビュー・感想・評価

太陽の墓場(1960年製作の映画)
4.9
渚オススメということで見てみやした! 前半は、たくさん出てくる人物とか、彼らのやってることとか、彼らが暮らしてる環境とかがごちゃごちゃしてる上、昔の日本映画特有の、母国語なのに何言ってんだか聞き取れない問題などで、内容をつかむのが大変だったのだが、ストーリーの全体像がはっきりしてからはめちゃくちゃ面白かった! ので、見終わってすぐに2回目見てみたら最初から文句なし! 最高! というわけで、とりあえず、概要の説明を簡単に書いておこう。舞台は、高度経済成長期、灼熱の夏、大阪は西成。西成っつうと今もかなり荒れた地域っすね。人物はたくさんいるけど、基本はハナコとタケシが中心。ハナコはお昼は不法に血液を売り、夜は体を売って生きてるビッチで、チンピラポン引き集団信栄会とヤクザの大浜組、そして、彼女がルンペンを集めて売血商売をするグループの三つの間をスイスイうまく立ち回るしたたかな女。彼女を演じてるのが名前も風貌もすごいインパクトの炎加代子。全然可愛くもキレイでもないけど、全身からすごいアグレッシブなオーラを放ってる。もうひとりのタケシは、ひょんなことから信栄会のメンバーになって、抜け出せなくなってしまう平凡な男子、こちらは佐々木功が演じてて、独特の色気があるもっさりイケメン。横顔が美しすぎる。彼は、女たちに対してひどい仕打ちをしまくってる仲間から逃げ出したいのだが、それができなくてどーしよう、と漠然と思ってる。で、彼のことをすごく気に入ってるのが、信栄会のリーダーのシンで、こちらはあの!津川雅彦が演じてて、最初ぜんぜん気づかんかった。エッ! こんなクールなイケメンやったん⁈ スーパーびっくり! シンは自分で気づいてなさげやけどタケシにホモ的感情を抱いてるんじゃないか、と勘ぐらせるシーンがチラホラ…渚映画やしね……。この3人はいろんな意味で魅力が輝いてるんやけど、それ以外の人物、特におばはん、おっさん達の汚らしさといったらハンパじゃない。とにかく金がない、金のためなら何でもする、けどみんな頭悪いからズル賢い奴らに搾取される、という最悪の構造のなかで、ぎゃーぎゃーわめいてる姿が大変に見苦しく、哀しい。彼らを取り囲んでいる環境の劣悪さも、本作最大の見どころのひとつ。戦後日本のカオス状態については、いろんな本で読んだことがあったし、いくつか映画で見たこともあったのだが、これほど痛々しく鮮烈に、その状況を描破してるのを見たのは初めて。イタリアやポーランドのネオリアリズム映画に酷似してて、これぞまさに日本のネオリアリズムだなーと思いながら見てた。ホントすごい。こういう日本の過去の(ってか現在も厳然と存在している)姿に目を向けることなく、アジアの他の国々を見下して、日本とは美しく素晴らしい国です、とナショナリズムに浸ってる日本人に、是非とも見てみてほしい作品だなと思った。後半は、この3人の関係と、おっさんルンペン達の関係が、それぞれの事件をきっかけに瓦解していく様子が容赦なく描かれていく。全編、暑くて、熱くて、汗ギラギラで、セクシーで、思わず閉口してしまう混沌がとんでもないエネルギーで展開。見終わった後は、よく分からない熱気で胸がドキドキしてた! 素晴らしい傑作! 渚映画は、後期の落ち着いた妖しいエロスがすごく好きなのだが、前期のガチャガチャしたのもすげーいい!と思った! また見たい! 他にもオススメがあったら教えてください。ちなみに、もうひとつオススメしてもろた愛の亡霊、レンタルできひん…。
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