こたつむり

太陽の傷のこたつむりのレビュー・感想・評価

太陽の傷(2006年製作の映画)
3.8
♪ 彼ニトッテハ安ラギダッタソノ色は
  今ハ白黒ニナリ何色カ分カラナイ

「刑務所で罪を償った」
なんて台詞を耳にしますが、刑務所に行っただけで罪は償えません。どんなことをしても他人を傷つけた事実は変わらないのです。

但し、それでは社会が成り立たないので、便宜上は赦して社会復帰を認めているだけ。赦したのは社会のシステム的な部分。人間の意識上で赦されるかどうかは別の話なのです。

それは少年法で保護された少年少女も同じ。
大切なのは少年院に行くことではなく、務めた後の生きる姿勢。その議論を経ずに年齢の引き下げだけを先行させても意味がないと思います。

そして、その考え方は本作も同じでした。
描きたいのは少年法の是非ではなく、もっと根源的なもの。他人を傷つけたら“一生赦されない”可能性がある…と言いたいのでしょう。とても真っ当な言い分ですよね。

思うに、江戸時代に認められた“仇討ち”を復活させれば良いのです。恣意的に運用しないようにハードルを上げる必要はありますが、そのくらい苛烈で嗜虐的な抑止力が現代人に求められているのではないでしょうか。

それゆえに本作は見事に苛烈。
そもそも主人公が哀川翔さんですからね。その時点で良識に則っていないのは明確。一般的なサラリーマンを描きたかったら、就業中に色眼鏡をかけさせる必要はありません。

何しろ、仕上げたのは三池崇史監督。
普通の映画を期待するのは間違っています。
期待するのは狂気。そして暴力。圧倒的な悪意を潰す…そのカタルシスさえ描けていれば良いのです。

まあ、そんなわけで。
少年法を題材にしながら異彩を放つ物語。
常識という枠から飛び出して鑑賞した方が楽しめると思います。

ただ、あえて難を言うならば。
相も変わらず役者さんへの演技指導はしていないと思われるので、一部微妙な部分があります…が、ある意味で貴重な話。不遜にも役者さんの実力を測れると思えば良いのです。ちなみに遠藤憲一さんは端役ですが最高でしたよ。いてえ。
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