イチロヲ

愛と誠 完結篇のイチロヲのレビュー・感想・評価

愛と誠 完結篇(1976年製作の映画)
3.5
額に傷をもつ不良生徒・誠(加納竜)が、献身的な少女・愛(早乙女愛)の父親が汚職事件の矢面に立たされていることを知らされる。梶原一騎原作・ながやす巧作画の同名劇画を映画化している、松竹産のバイオレンス・ドラマ第3弾。筆者は原作を読了済み。

完結篇となる本作では、原作の後半部を半ば強引にパッチワーク。ヤングマフィアとの確執から、政治家の汚職事件(ロッキード事件が元ネタ)までの流れを消化させている。しかし、表層的な継ぎ接ぎに過ぎず、旨味が感じられないのは旧態依然としたまま。

役者陣では、ヤングマフィアの団長役を演じる柴俊夫と、政界の権力者役を演じる大滝秀治が、身震いするほどの渋い演技を披露してくれる。早乙女愛の演技力の向上も見られるが、同時に見た目がぽっちゃり化。顔のアップがごっつぁんです。

全方位に慈愛の心を向ける愛と自身の弱さを暴力で隠している誠。その両者のメロドラマを主軸にしつつ、イデオロギー闘争へと繋げるのが原作の醍醐味(実は梶原一騎の父親がクリスチャン)。実写映画でそこまで汲み取らせるのは、至難の業と言ったところか。
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