佐藤克巳

鶴八鶴次郎の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

鶴八鶴次郎(1938年製作の映画)
5.0
芸道物で「残菊物語」と比較されるが、どちらかと言えば「浮草物語」に近い燻銀の趣深い成瀬巳喜男監督作品の傑作。鶴八山田五十鈴とその母を師匠とする鶴次郎長谷川一夫は兄妹同然で育ち芸を精進する仲だが、息のあった舞台を披露し喝采を浴び降りて楽屋に戻ると芸の口論が絶えない。芸に没頭し短気な鶴次郎は、鶴八を支援する大旦那大川平八郎に嫉妬心を抱き鶴八に辛く当たる。二人の関係を心配する番頭藤原釜足と興行師三島雅夫は名人会後の温泉宿を世話し、二人は本心を打ち明け寄席小屋を持つ決心をする。鶴次郎が、寄席開幕を前に奉加帳を捲ると大旦那の名があり鶴八が借りたと暴露すると、相方の決裂を迫る。単独になった鶴次郎は人気が下がりドサ周りに転落、鶴八は大旦那に嫁ぎ円満な家庭に恵まれた。番頭は、鶴次郎の窮地を見兼ね名人会復帰を画策。再び二人は晴れの舞台に立ったが鶴次郎は、楽屋で鶴八を非難し追い返すと、酒場で番頭に芸人の末路を語りその本心を仄めかす。
佐藤克巳

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