tomie77

プラハ!のtomie77のネタバレレビュー・内容・結末

プラハ!(2001年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

プラハの春により自由への期待に満ちた1968年のチェコスロバキア。若者たちは青春を謳歌し、高校卒業を控えた少女テレザと親友のブギナ、ユルチャも素敵な恋とロストバージンに憧れていた。テレザはしつこく言いよってくる同級生オルダは相手にせず、他所から街にやってきた青年シモンと惹かれ合うが彼には大きな秘密があった。
60年代のファッションや音楽に彩られたミュージカル映画。
前半は映像と音楽は大好きだが、恋に恋する少女達とよそ者の青年との恋愛模様がありふれていて少し退屈。しかし台詞の端々に確かに冷戦時代の東側である事が伺え、恋の相手が脱走兵と分かる辺りからテレザの運命が大きく動き出して一気に緊張感が増す。
歴史の流れに翻弄される人々と、今後のチェコの苦難を予感させる悲劇的な終わり方が胸に迫った。
シモン達が密告され、テレザは当たり前のようにオルダがやったと決め付けるが実はテレザと親しい車掌がした事だった。親しい隣人が善意からおぞましい事をする姿に、思想の統制された世界の恐ろしさが垣間見える。

読書好きな優等生ユルチャが恋をして弾ける一方、奔放なブギナのロストバージンが叶わないのが意外で面白い。ドライなポブ、料理好きなエマン、一途なシモンと青年達も個性があって親近感が湧く。肝心の主人公テレザの人格が恋に恋する美少女程度の薄さだったのが残念だが、ありふれた少女が否応なく時代の流れに飲み込まれる恐ろしさを描くために、あえてそうしたのかもしれない。

内容は重めだがファッションや音楽でレトロ可愛さが満喫できるので、可愛い映画が好きな人にもおすすめ。
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