ふき

スウィート・ロードのふきのレビュー・感想・評価

スウィート・ロード(1989年製作の映画)
2.0
"I love the Power Glove... it's so bad."

「ガルパンはいいぞ」の先駆けとなる(?)、「パワーグローブはいいぞ……かっこいいぞ……」を発したルーカス様が見られる名作中の名作。
パワーグローブをまとったルーカス様が『ハイウェイスター』をプレイするシーンだけで、本作を見る価値はある(断言)。

実態は、ネバダからカリフォルニアを目指す少年少女のロードムービーなのだが、正直出来はよくない。
まず全面的に、構成要素が噛み合っていない。どちらが先にあった企画なのか、ゲーム要素と、登場人物がカリフォルニアを目指す件が噛み合っていない。子供たちの動きと、「子供たちを追う保護者組」と「家出人保護のプロ」のコミカルな攻防が噛み合っていない。最終的な決着である「家族の絆の再生」と、クライマックスのゲーム大会でジミーが優勝する件が噛み合っていない。すべてがバラバラ。
理由のない「○○が上手い」で障害をクリアしていくご都合主義は不問としても、お話が行き当たりばったりな上に脈絡がなさ過ぎるので、いくつかある感動ポイントがどれも雰囲気だけになってしまっている。

ではゲームプレイやクライマックスの大会のギミックで面白がらせられるかというと、その完成度も低い。
本作はこの手の映画にしてはゲーム画面を映すカットが多く、特にゲーム大会では当時アメリカで未公開だった“あの”ゲームのプレイ画面をこれでもかと見せてくれる。なのだが、この大会がとにかく酷い。ゲーム画面に表示されているスコアや時間表示が台詞と違っていたり、ゲーム大会の決勝戦なのに(初プレイとはいえ)凡プレイで凡ミスを連発したり、五万ドルの賞金をかけた勝負の説得力はゼロだ。
「低クオリティだろうとゲーム画面を映せば子供は満足する」と思っていたのかもしれないが、ファミコンが好きだった子供時代に見た時こそ「ふざけんな」と思ったのだから、「子供向け」としても失敗している。

今回見返す目的だったルーカス様も、「パワーグローブはいいぞ」と言っていた時の存在感は一瞬で消え、相手を軽んじる発言を繰り返し、イライラして子分に八つ当たりし、勝負外で相手を陥れようとし、決勝戦中は露骨に焦るなど、極端に小物化してしまう。これではルーカス様ファンも納得できないだろう。

そんな具合に、ロードムービーとしてはトンデモ映画だし、ゲーム映画としてはゲームに愛があるとは言えない出来だ。
まあでも、アメリカにおけるファミコン全盛期の文化を垣間見られる点は興味深いし、ユニバーサルスタジオでは有名モンスターや「え、これ大丈夫か?」的キャラクターもいるので、全然楽しめないわけではない。
あと大人になってから見てビックリしたが、コーリーを演じるフレッド・サベージ氏の演技がいい。脚本や演出のお陰もあるが、一三歳にして演技の質が大人で、彼のシーンは色々と面白かった。
上記に挙げた悪いところも今となっては逆に笑えたし、見て損をしたとは言わない……かな?
ふき

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