タカシサトウ

仮面/ペルソナのタカシサトウのネタバレレビュー・内容・結末

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

[人格の統合]

 なかなかすさまじかった。リヴ・ウルマンの女優エリサベートは、自分の過去の痛みを覆う為に失語症になって仮面を被る、そして、ビビ・アンデショーンの看護婦アルマは、自分が気付かないうちに被っている仮面をはぎ取られるいうという事だろう。

 リヴ・ウルマンは最後までほとんど喋らず、ビビ・アンデショーンが、最初から最後まで喋り続ける、それで90分惹きつけていくのだから、なかなかのものだ。しかし、リヴ・ウルマンもほとんど喋らないのに、あたかも段々ずっと喋っているような感覚になってくる。そして、エリサベートとアルマの人格も段々入り混じってあたかも一つの人格に統合されるかのようだ。

 喋らないというのは、身を守ると共に攻撃でもあると思った。アルマが話したことをエリサベートが他人に話すことによって攻撃になる。アルマもエリサベートの病状を暴露して逆襲する、そのやり取りが凄かった。

 そして、様々な映像が入り込み、フイルムが焼けてしまう所迄になって、これが単なる映画であることも観ている私達に自覚させられる。

イングマール・ベルイマン監督の作品の中では、分かりにくい方だが、最後まで目が離せなかった(2018.9.22)。 

 失語症になったエリザベートが、アルマという側面によって、仕事の邪魔になるので、子供を阻害し、死んでほしいと願っていたことを思い出してしまう。その為に、喋らない所へ逃げ込んだことに気づき、最後には喋れるようになっていく、とも言える。

 また、将来への希望を描いていたアルマが、黙ったままで鏡のように反射するエリザベートに話をすることで、自分の内面を見させられる。そして、奔放なセックスによって自分自身が傷ついていたことを見させられる、とも言えるのだろう。

 ドッペルゲルガーものとして観たけれど、アルマとエリザベートのどちらが主になるのかが私にはよく分かからなかった、難しいと思う(2020.12.6)。