るるびっち

青春怪談のるるびっちのレビュー・感想・評価

青春怪談(1955年製作の映画)
3.5
機知に満ちて大変面白いのだが、ストーリーではなくキャラクターの面白さで見せていると思う。
この時代の邦画は、大人たちと行動様式や価値観の違う戦後の若者たちを面白がって描いている。
理屈に合わない義理人情よりも、ドライで合理的だが利己的な新人類たち。
三橋達也と北原三枝のカップルは恋愛という面倒なことは省いて、合理性のみで結婚しようとする。
戦後の新時代のカップル像ということだ。
そういうのはこの時代の作品によくあるが、傑作なのはその母親が49歳だけれども精神は少女という設定。
ふつつかな娘ではなく、ふつつかな母親というのが可笑しい。

天真爛漫で、夫の墓参りで「あなたのことを、すごい頼りにしてたのにポキッと折れてしまって・・・」ちょっと太めの轟夕起子が言う。
北原三枝が男だというデマを信じて実父に確認すると、父親も子育ては亡き妻に任せきりで、娘の裸を見たことないから解らないと告げる。
これは家事育児を女性に押し付けている事への社会批判かもしれないが、それ以前にとぼけている。

但し今もそうだが、邦画はキャラクターの面白さだけで突っ走ってしまい、ストーリーを練るということを余りしない。
そのせいで散文的になったり、主人公より面白い造形のキャラの話に筆が進み主人公を起点にテーマを描くということが疎かになりがち。
もう少し、ストーリー工学という物を研究した方が良い。
和田夏十さんは才人だからキャラの面白さだけで十分書けるが、テーマを浸透させるにはストーリーが大事だと思う。
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