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赤ちょうちんのtackyのレビュー・感想・評価

赤ちょうちん(1974年製作の映画)
4.5
かぐや姫の楽曲をタイトルにした青春シリーズ第1弾。
この当時は「同棲」という事象が注目される時代になっていて、上村一夫の漫画「同棲時代」や、かぐや姫のシングル「神田川」かヒットして、一代ブームとなっていた。
映画界もそれに目をつけた。同棲という響きから、若い結婚していない男女の性的な関係を連想するのか、有名女優の大胆なベットシーンを入れた作品を、各映画会社競って制作したが、この作品はロマンポルノのお膝元日活なのに、ベッドシーンよりも他の作品と違って、とても芸術性の高い作品となった。

金も希望も未来も無く、赤ん坊を抱えた若夫婦の世間からの孤立感と、それでも必死で庇い合って生きていく様が健気である。

隣近所や大家との軋轢で引っ越しを繰り返して、四度目の引越しにして、破滅のクライマックスへ向かう物語の、当時の衝撃は半端無かった。

藤田敏八の大袈裟で大胆な演出も大きいが、やはり主演の秋吉久美子の存在感が素晴らしい。
計画性も無い子供のままの夫を、健気に支えてる、寂しがり屋の神経質な幼な妻を、とても上手く演じていた。
その意味において、「同棲時代」の由美かおるや、「神田川」の関根恵子の「脱ぎ」の話題性よりも、感情移入できるキャラを演じた秋吉久美子の方が素晴らしかったと思う。

ラストシーンの高岡健二の独白の後、胸に余韻を残す作品である。
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