YasujiOshiba

ロゴパグのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ロゴパグ(1963年製作の映画)
-
ロッセリーニは蘊蓄オヤジって感じかな。飛行機の操縦席の計器とか8ミリカメラの使い方なんて、じつにロッセリーニらしいのだけど、人間心理に関しては、ドラマじゃなくてご高説拝聴という感じかな。

思いがけずよかったのがゴダール。期待せずに見たら、最後まで引き込まれちゃった。ほとんどSFのノリなんだけど、論理性が少しずつ破壊されてゆく日常のなかに、それでも残る肌触りの温もりが映像にとらえられているんだよね。ゴダールのそういうところは好きだわ。

目的はパゾリーニの『リコッタ』だったんだけど、ようするに彼流の『8 1/2』を撮ろうとしたってことなんだろうな。そう、踊るフェリーニをね。

けれどもパゾリーニの眼差しは、自分自身に向けられるのではない。誰からも相手にされず空腹で走り回りながらも、最後には娯楽のために文字通り死ぬほど食べさせられて十字架の上で死ぬストラッチ(イタリア語ではボロ雑巾の意味)を捉えるのだ。

このストラッチを演じるのは、本物の壁積み職人のマリオ・チプリアーニだけれど、彼の存在感が抜群なんだよね。オーソン・ウエルズの存在感とみごとなバランスをとりながら、ブルジョワでも、凡人でも、聖人でもない、誰からも相手にされず、相手にされるときはボロボロにされるまで遊ばれてしまうような「ストラッチ」の詩/死を、ひとつのイコンとして描きだしたというわけだ。

最後の『放し飼いのニワトリ』は、トニャッツィの演技を満喫。カロセッロというイタリアのテレビ番組とその時代を描いているのだけど、これはほぼ日本でも同じことなんだろうな。消費社会の到来ってやつだね。
YasujiOshiba

YasujiOshiba