シズヲ

血斗のジャンゴのシズヲのレビュー・感想・評価

血斗のジャンゴ(1967年製作の映画)
3.9
肺病を患う大学教授が粗野な強盗団首領と出会い、共に行動する中で次第に己の暴力性へと目覚めていく……。ジャン・マリア・ヴォロンテ&トーマス・ミリアンのW主演が鮮烈な佳作マカロニ・ウエスタン。似たり寄ったりの筋書きが多いマカロニだけど、本作は中々の変化球で印象的。民間人とならず者のコンビという点では後年の『夕陽の群盗』もちょっぴり思い出す。こんなタイトルだが別にジャンゴは出てこない(マカロニ、邦題で勝手にジャンゴが付けられがち)。

あのイーストウッドとも殺り合ったヴォロンテが“理知的で病弱な教授”という役どころを演じている時点でまず意表を突かれる。教壇に立ったり銃弾の摘出に怯えたりするヴォロンテ、やたら新鮮で味わい深い。温厚だった教授が何かに導かれるように強盗団首領=ミリアンへと着いていき、互いに影響を受ける形で変貌を遂げていくという構図がやはり面白い。徐々に悪の才能に目覚め、やがて地頭の良さを活かしてならず者の集団を牛耳っていく姿は印象的。

対する強盗団首領もまた教授との出会いによって人情や善を自覚するという“逆転”を迎え、教授の変貌を間近で見つめていく。それらを表現する両者の演技も含めて、ヴォロンテとミリアンのアンサンブルが秀逸。それはそうとおかっぱのミリアンはちょっと奇妙な感じだ(それでも格好良いんだけどね)。強盗団に潜入するピンカートン探偵社の捜査官も準主役的な立ち位置で中々の印象がある。

ただ主役二人が心情の変化に至るまでの過程は少々予定調和的でざっくりしてる感がある。展開の説得力に関して両者の演技力に若干依存してる節は否めない。また終盤は折角ヴォロンテとミリアンの亀裂によってラストの展開へと収束するのだから、そこで決闘くらいやって二人のドラマをもっと盛り上げてほしかった。

惜しい部分はあるとはいえ、それでも内なる正義を軸に二人の立ち位置が完全に入れ替わるラストは印象深い。北部と南部、ある種の“異文化”的な存在との接触。相互に影響を与え合った果ての変化、そして善悪の反転。テーマ性を下地にした構図が印象深い。マカロニ、傑作とまでは行かずともこういう佳作が度々出現するので侮れない。

あと亡霊の街での賑やかなダンスのシーン、マカロニというより何だか本場西部劇のような趣があってさり気なく好き。
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