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エル・マリアッチのkuuのレビュー・感想・評価

エル・マリアッチ(1992年製作の映画)
4.1
『エル・マリアッチ』
原題El Mariachi
製作年1992年。上映時間81分。
米国、墨西哥(メキシコ)合作。

続編にあたる『デスペラード』じゃ主役のエル・マリアッチをアントニオ・バンデラスが演じてて、本作でマリアッチを演じていたカルロス・ガラルドーはマリアッチの仲間の一人である二丁マシンガン使いのカンパ役として再出演してる。

メキシコの小さな田舎町アクーナで、刑務所を脱獄したギャングのボスアズールが、盗んだ金をひとり占めに。
昔の仲間モーリシオ(現在は違う組織のギャングのボス)の配下を皆殺しにしていた。
アズールは黒いギターケースにマシンガンを入れ、黒い衣装に身を包んでいた。
手下を殺されたことに激怒したモーリシオは、彼の行方を追い、町中に黒いギター・ケースを持った黒服の男を探し出すよう指令を出す。
一方、黒いギターケースを抱えたとあるマリアッチが仕事を探してやってきた。。。

弱冠23歳のロバート・ロドリゲスが、監督・脚本・ 撮影などをこなし、製作費わずか7000ドル。
撮影日数14日間で撮りあげたB級映画。
インディーズとは云え、その完成度は高ぇし、コロンビアピクチャーズの目に留まって、いきなり全米配給されて、当時無名であったロドリゲスの名は一気に知れわたることとなったのが本作品やるなぁ。
大げさななアクションの演出、
ラテン趣味、
決死の戦いに挑む男の哀愁。
マカロニウエスタンや『最後の西部劇監督』『西部劇の破壊者』サム・ペキンバー作品、香港ノワールとか、
そやいな映画への偏った愛がアチコチにあふれてて、マジな銃撃戦が繰り広げられていたかと思うと、
次のカットじゃハァなんとも間抜け面をした置物に切り替わるちゅう、緊張と脱力タイムを自在に操るオフビートな演出は魅力に満ちているかな。
好きな人はドップリ浸かれるし、
そうじゃなきゃドップリ疲れる。
個性的なリズム感ある編集と、音の連携(次々 と外されていくギターケースの留め金をとらえたカット割りと、 留め金が外されていく音の心地よさ)による、粋なテンポとともに映画を見せる不思議な力は、ロドリゲスならではのテイストとしてすでに完成を見てるんちゃうかな。
90年代を迎えた米国映画は、ハリウッドメ ジャーによるブロックバスター大作がマンネリ化する一方でポストモダン志向によるローファイという価値観を敷衍し、映画史に新たな潮流を築いていった。
もっともロドリゲス監督の場合は、低予算で撮らざるをえないちゅう環境の制約があったわけやけど、大金をかけへんでも、愛と工夫さえありゃ娯楽映画はつくれるということを証明した本作は、多くのインディーズ作家を勇気づけたし、クソ映画も量産されて行った、二つの面を作ったかな。
映画の可能性を拡張した偉大な一作なんやと私的なから思いました。
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