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宇宙戦争のhoshのレビュー・感想・評価

宇宙戦争(2005年製作の映画)
3.7
ダメな父親レイは家族とコミニュケーションが取れず呆れられるばかり。すると突然トライポッドが侵略を開始し日常は一変する…

『E.T.』や『未知との遭遇』と違い友好的でない宇宙生物の本気の殺戮・侵略を、『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』のドキュメントタッチを経たスピルバーグがいつもの怒涛のテンポで撮っている。そのためとんでもなく絶望的かつ暴力的。暴力とサスペンスと戦場って点では1つ頂点を極めた作品では。

特に前半30分、キャッチボールで家族関係の不和と後の暴力の予感を提示しつつ、春の嵐→トライポッド登場。教会破壊。の一連のシークエンスが完璧。静と動を使い分け、危機が一気に折り重なっていく演出とその手際はもはや神の領域。モブ目線で常に敵を見上げ続けるカメラアングルも良い。今では見ることの少なくなった大群衆の阿鼻叫喚の様子も的確に捉えている。映画すぎ…

後半の地下室での生物との攻防も光と影、限定空間を完璧に活かしたカメラの位置取りでセリフが全くないのに超ハラハラする。サイレントでも成立しうる教科書みたいなテクニックの応酬。

アメリカという最強の国家が一瞬の侵略で脆く崩れ去っていく。行く先々で暴徒化した人々の嫌な本性を見せつけられる。しかも本作に至っては子どもの目線を通しているから余計醜悪に映るし。9.11テロリズムの混乱の隠喩という意見には納得した。けれど、本作は絶望やニヒリズムでは終わらない。スピルバーグ流の「人間ナメんな」で締められる辺りに、彼のヒューマニズムを信じる作風が見える。(原作あるみたいだけど)

最後に、スピルバーグの暴力って純粋だから怖いと思う。執拗な殺戮演出はあるし悪趣味だけどフェチズムは感じない。「まあ死ぬよな」みたいなドライさ。それと子どもが人形遊びしてたら手足ちぎれた。に近い無邪気さ。だから怖い。
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