KnightsofOdessa

アラジンと魔法のランプのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

アラジンと魔法のランプ(1967年製作の映画)
3.5
[ソ連版ジーニーは真っ赤な老人だった] 70点

さて、青いウィル・スミスで人気の実写版『アラジン』だが、実写化はこれまでも何回か行われているようで、実際親友はフランスの実写版を発見していた。後にフランス人に訊いたところ、"あーなんか、そんなんあったわwww"と言っていた。そんな中、ソ連映画クラスタを目指している私がソ連版『アラジン』を発見するのには時間がかからなかったことは想像に難くないだろう。

予言で出てきたアラジン青年を探す魔術師で幕を開ける。門番を眠らせたり、唐突に登場する火を噴く少年に対抗してツバを吐いて爆発させたりと技工を凝らした遊びを見せてくれるが、基本的に聞き込みで探す魔術師。彼が市場を歩いていると、突然軍隊が突進してきて、姫の歩くカーペットを敷き、"お風呂入りたくなーい!!"と文字通り手足をバタバタさせて駄々をこねる姫が登場。ギャグ映画か。"じゃあ何がしたいのよ?!"と衛兵長がブチギレると土下座してる民衆を指して"彼の顔を上げさせて!"と答える。"首切ることになりますが?→"だから何?"と。典型的なワガママ娘だ。ジャスミンってこんな感じだったっけ?それに対して、顔を上げた青年も"地震が起きて他の全員死んで二人だけになりたい"とかスムーズに出てくるヤバイ男だった。そして、エアギターで歌う(しかもなぜか音楽がオーバーラップする)と、衛兵長も姫もガチ泣きする。

なんの映画だよ。

衛兵長が泣きながら処刑を言い渡すと、魔術師が青年=アラジンを救出。そんなことも知らないアラジンはヌルっと帰宅して"ママー!!スルタンの娘の手に触ったよー!!"と踊りながら報告。そこに叔父を名乗って魔術師が乗り込んで来る。彼について行き、言われたとおり迷宮都市に入って口の開いた壷(ランプじゃないよ)をあっさり手に入れる。それを魔術師に渡そうとして殺されかけ、気付いたら迷宮都市に戻っていた。ジーニーに彼が叔父さんでないことを伝えられ、"殺すか?"と訊かれると"地球の四隅に分割して置いといて"と伝え、魔術師は四人に分裂してどこかへ消える。家に帰ったアラジンは家族に"こいつ、ジーニーっていうらしいぜ"を紹介する。家族は卒倒しかけるが普通に受け入れる。

姫がなぜか大縄跳んでると、アラジンの要望を聴いたジーニーによって彼の家に飛ばされる。それでも特段驚かず、"あれは何?"とアラジンの叔母さんに聴きまくってエンジョイ。逆に叔母さんに"あんた16歳!?あたしゃ3歳の頃からヤギくらい知ってたわ!"とマウントまでとられてる。アラジンと姫は結婚してくれんの?→どうかしら、みたいないきなり踏み込み過ぎな会話を交わした後、一瞬にして衛兵隊に発見されてスルタンのもとへ。すると、ここでもめげない鉄のメンタルの持ち主アラジンは"やっと会えた!お義父さん!娘さんを僕にください!"と言うのだ。勿論一発退場。

周りの人間が夢だったと言い張ることで姫をアラジンから引き離そうとするが、当のアラジンはジーニーの力によって脱走して二人は再会する。すると、ジーニーの力を使った姫はその場に結婚式場を展開させ、招待客に夢を信じさせることで結婚しようとする。発想力宇宙規模。しかし、アラジンはリアルでやりたかったらしくヘコんで出ていく。

ここで魔術師が復活し、壷を奪ってアラジンにジーニーをけしかけるが、アラジンに新しい壷をもらって味方にもどるという雑な超展開を迎え、魔術師を街から追い出してめでたく二人は結婚する。

未だかつてここまで超展開を繰り返しながら、クレーターの如きツッコミどころを用意した映画が他にあっただろうか。原作改変どころか、娯楽にすらなってないひでえ映画なんだが、皆大真面目にやってる(当たり前)とこに謎の好感が湧いてくる。話のネタにはもってこいな作品だ。
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