さわだにわか

松本清張のスリラー 考える葉のさわだにわかのレビュー・感想・評価

3.8
松本清張ものの映画の中では比較的B級テイストというか、ねちっこい感じがないストレートな小品ミステリーなのだが、ショーウィンドウの向こう側から無音の街路を撮ったり、ドリー・アウトを積極的に活用して立体的な構図を作ったり、拘置所なんだか刑務所なんだが知らないがビルの屋上にある中庭で鶴田浩二がぶらぶらしていると背景に国会議事堂が見える(これがラストでリフレインする)、円形のガラステーブルを囲んで行われる謀議をガラステーブルの下から見上げるように撮る、などなど鈴木清順もかくやのケレン味たっぷりの画作りがかなり面白い。

静止画で構成された仲谷昇の過去パートもスタイリッシュ、鶴田家に置かれたミシン台と腹黒政治家の家に置かれたワシの彫像の対比は鮮烈、そこそこ入り組んだ話をたった85分で駆け抜ける都合、鶴田浩二でさえ呆気なく死ぬが、そのドライな展開がいくら考えるといってもしょせん葉っぱ程度でしかない悪者連中の哀しさをそこはかとなく漂わせて、葉を踏みにじって知らん顔の戦後政治の偽善を告発するのであった。

あとリアルに発射直前の列車の中と外にに役者乗せて外の役者(江原)が走り出した列車と並走しながら中の役者から証言を引き出そうとするっていう場面すごいな。よくやるよ。
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