ユウ

雪の断章 情熱のユウのネタバレレビュー・内容・結末

雪の断章 情熱(1985年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

佐々木丸美さんの原作がすきで、円盤化されていないこの作品を観たくて仕方がなかった。監督没後20年ということで円盤化され、ようやく観ることができると歓喜したものの……蓋を開けてみればびっくり、原作の面影がなにひとつない。雪が美しくない。

「客が観たいのは斉藤由貴だから」と幼少期のシーンをワンカットで終わらせてしまったのは有名な話ですが、そのせいで伊織と雄一と大介の関係があまりにも薄っぺらいものに見える。伊織が博多に行く前に刑事に詰問を受けるシーン、男二人がキャッチボールをはじめるのにげんなり。大事に育てた妹のような娘のような存在が殺人容疑者呼ばわりの扱いを受けてるのに、一体なにをしているのか。伊織の家出シーンで「北大を受けなさい!お前と俺の繋がりはそこしかないんだ!」とビンタするシーン、何も愛が伝わってこないしそもそも何を言っているのか意味がわからない。大介の殺害の動機を話しているシーンに、どうしてモノローグをかぶせてしまったのか。冒頭で「あの子も犠牲者か」と伏線はっておいて、それはないよ……。

最後の遺書の文面だけきっちり忠実に再現しているのがまた悔しくて……。劇中ではヒロインが何度も名前を呼ばれていましたが、史郎はずっと彼女のことをチビと呼んでいた。遺書のなかでさえも。たった一度だけ「飛鳥」と彼女の名前を呼んだワンシーン、あれにどれほどの焦がれた熱がこもっていたことか。あれこそ情熱だったと思うのに。

雪の断章、というタイトルを使わない別の映画だったら良かったのに、とどうしても思ってしまう。原作ファンとしてはあまりにも悔しくて涙が出た。
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