排路

暗黒の命令の排路のレビュー・感想・評価

暗黒の命令(1939年製作の映画)
4.5
不意に面白い映画を見させられた気分です。

男男女の三角関係、町のみんなから笑われた新米保安官、ゲリラに成り下がった教師、といった事柄が提示されるのにもかかわらず、
展開がフォローされない。それは選挙や戦争といったより大きな出来事が起こることで後回しにされているのか、代替の決着の場が用意されているということなのか、過激で豪快なウォルシュだからなのか、わからない。

しかし1番気になって仕方がない三角関係に関しては、ひと言で町全体を真逆に向かわせ、人を何人も殺せるくらい絶大な主導権を持った男2人に何度も求婚されるが、返事先延ばしにする拒否権を行使できる、これまた強い権利を持ったクレア・トレヴァーのキャラクターによってなかなか話が進まないような状況になっている節もある。しかしシーンの最後に1人のショットをつけておけばいいというものでもないでしょう。

しかしそういった気がかりを一瞬でも忘れさせてくれるのが、町に元教師の主導するゲリラが押し寄せいよいよというときの衝突の激しさ、そしてジョンウェインのアクションで、空いた口が塞がりません。

大きな炎に包まれた、きっと全ての建物が焼け落ちる町のロングショット、土嚢越しに仰角で撮られた無数の銃口のショット。
そして、敵に囲まれているのに身を低くしながら馬車に乗り馬を操るジョンウェインの離れ業の数ショット。そのうちのひとつは背景が炎に覆われて笑ってしまうくらい英雄的でした。

しかし最後まで新米保安官の成長過程や男2人の決着は取り上げられずに終わりました。
元教師のゲリラとその母の関係は、ことあるごとにちゃっかり触れられていて、あまり重要ではないように見えたけど、2人のラストシーンはすごく良かった。なぜこの2人だけこんなにも繊細に描いたのだろうと疑問に思うくらい。
そういえば白熱やハイシエラも母性を扱ったウォルシュの作品でした。
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