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日本の悲劇のmhのレビュー・感想・評価

日本の悲劇(1946年製作の映画)
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戦中に作った国策映画(の皮をかぶった反戦映画)「戦ふ兵隊」が上映できなかった亀井文夫が終戦直後に手掛けた、戦中のファシズムを批判した反戦映画。封切り一週間で公開停止になったとのことなんだけど、文化庁のデータベースに公開されたとのデータはない。
1946年における共産主義者は長く幽閉されていた反動で優遇気味のはず。それがどうして公開停止になったのか首をかしげてググっていると、いったんはGHQの検閲を通過したものの、民間情報教育局(CIE)と民間検閲支隊(CCD)の派閥争いの犠牲になったとのことだった。
(ついでにメモっておくと、逆コースのはしりは1947年の二・一ゼネストをGHQが取り締まってから。逆コースの言葉自体は1951年から一般化する)
戦中はファシズムから目のかたきにされ、戦後はアメリカ資本主義に目のかたきにされる共産主義者の弾圧の歴史を、ひとりで背負ってる形になった亀井文夫すごい。
マニラ大虐殺などに触れ、当時人気のラジオ番組「眞相はかうだ」の映像版みたいな体裁をとっている。「共産主義者から見た大東亜戦争総括」という意味においても大変興味深い。
財閥のことを支配者階級と呼んでおり、これには天皇も含まれている。万人は平等であり、所有すること自体が罪である共産主義にとって、財閥も天皇もみんな敵というスタンスを隠そうともしないので、上映禁止になってもおかしくはないよねという内容だった。
構成にもこってる。「ところが」などナレーターの接続詞を映像で受けたりするのがさすがだった。
軍国主義を表すカットのいくつかに、東宝の特撮(「ハワイ・マレー沖海戦」)も混ざっていたのが面白かった。
映画というよりも、名作ドキュメンタリーという認識で間違ってないと思う。
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