櫻イミト

日本の悲劇の櫻イミトのレビュー・感想・評価

日本の悲劇(1946年製作の映画)
4.5
コロナにかかり休みが延びたので戦争映画鑑賞月間を延長。

過激な戦争責任告発映画。映画人のなかで唯一、治安維持法違反容疑による検挙・投獄された亀井監督が戦後釈放されてすぐに制作。GHQの検閲は通過したが公開一週間後に吉田茂首相の圧力で上映禁止となりフィルムは没収された。木下恵介監督の「日本の悲劇」(1953)とは無関係。

戦時中の戦意高揚プロパガンダニュースを再編集し、大本営発表のウソ、軍閥と財閥の暗躍、天皇の戦争責任を訴え、軍服姿の昭和天皇が背広姿へとオーバーラップするカットを挿入。。。

このような映画があったとは驚き。怒れるパンク魂を感じ、頭の中でセックス・ピストルズのゴッド・セイヴ・ザ・クイーンが鳴り響いた。昭和時代に本作を上映したら間違いなく右翼の襲撃を食らっただろう。

戦時中のニュース・フィルムをモンタージュして批判的な分析をする作風は、奇しくも前年にフランク・キャプラ監督が作ったプロパガンダ映画「驚異の大日本帝国/汝の敵日本を知れ」(1945)と同じ。偽書『田中メモリアル(田中上奏文)』を論拠に用いているところまで同じだ。結果的に本作は、同作への日本からの回答となっている。
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