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007 スカイフォールのrensaurusのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
4.0
ロジャー・ディーキンスの手により、前二作を遥かに凌駕する映像美が与えられ、さらには鏡写しになる敵との戦いが描かれる脚本であることから、ボンドに死の匂いが漂っているという、「美と死」を纏った色気のある作品。

アバンからオープニングまでの流れにまさに「美と死」が表現されており、この時点で「あっ、名作になりそう」という予感がします。アクションの殺陣も映し方もスケールも漸進的にヴァージョンアップ。さらに前述の通り美しい映像、構図、カメラワークもあり、前二作にはないスタイリッシュさがありました。

ボンドの小粋でスマートな感じも様になってきていて、危うげの中に茶目っ気が潜んでいるというダニエル・クレイグのボンド像の輪郭が一気に浮かび上がった印象。特に、今回登場したイヴがいい味を出しており、前作カミーユっぽい路線のヒロインとしてボンドを引き立てつつ彼女自身も見せ場をもつ感じが良かった。

敵役のシルヴァは、ダークナイトのジョーカーに影響を受けたようなキャラクターで、主人公の写し鏡であり、全てを見透かすような支配力を持ちながら、Mへの私怨から精神に異常をきたしている病的な演技が素晴らしかった。ただ、シルヴァの死に様が投げたナイフで一突きという呆気ないものだったのが少し不満。

Mも死に、ボンドも引退するのかと思いきや任務を続投するという生き地獄が始まってしまったエンドになっており、完全に死に場所を見失った彷徨う亡霊に。どう終わらせるのかが素直に気になる。
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