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グリーンフィッシュのAZのレビュー・感想・評価

グリーンフィッシュ(1997年製作の映画)
3.4
家族の幸せや愛する人と結ばれることをただ願っていただけなのに、いつの間にか取り返しのつかない方向に進む。熱く衝動的な部分がある彼は、自分の行いに後悔し苦しむ。その姿は子供のように純粋。純粋が故の結末。だからこそ切ない。

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トントンと話が進む。家族の関係を映し出した後、その中で自分にできることを模索するマクトンは、惚れた女性(ミエ)がきっかけで闇の社会に少しずつ身を投じていく。ただ彼は、闇に手を染めている自覚はない。その純粋さ従順さが組織のボスであるテゴンに気に入られていく。テゴンにも純粋な部分があり、夢を持っている。マクトンに自分を投影したのだろう。

時が流れる中で、少しずつ関係性は変化していく。それは良い意味でも悪い意味でも。家族やミエへの愛、慕っているマクトンに起こる出来事によって、感情が抑えきれなくなり衝動的に行動してしまうマクトン。ただ、衝動的に起こしてしまった為、その過ちに動揺し嘆き苦しむ。

そして、慕っていたテゴンによって殺められる。愛するミエの前で。この辺り、テゴンはどういう感情だったのだろうか。暴力的なことを嫌っていた彼は、酷い仕打ちを受けながらも以前のボスに忠誠を誓うこと、義理を大事にしていたのかもしれない。その信念を壊した罪を償わせたのだろうか。最後まで、テゴンにすがるマクトンの姿が虚しく描かれていた。

彼の死によってか、家族はまとまり夢であった食堂を開いている。そこへやってきたテゴンとミエ。そこでミエは以前マクトンからもらった写真によってそこが彼の場所だったことを悟り涙する。だが、なんだか複雑な気持ちにもなった。なぜなら彼女は彼が死にゆく姿を見ていただけだし、彼を殺したテゴンとの子を孕っているのだから。

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とにかく虚しさが残る作品。純粋が故に闇の社会に呑まれてしまったマクトン。ただ、最後まで悪に染まることなくその純粋さは保たれていたと思う。だからこそ切ない。自分の人生の終わりを悟り過去の思い出を回想する姿が強く印象に残った。

イ・チャンドン監督は、『ペパーミント・キャンディー』や『ポエトリー アグネスの詩』、『オアシス』など、純粋な心を持った人物が登場し、そしてその純粋さにより社会の中でもがき苦しむ姿がよく描かれる。イ・チャンドン監督にとって一つのテーマなのだろう。
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