ひろ

グランド・ホテルのひろのレビュー・感想・評価

グランド・ホテル(1932年製作の映画)
3.5
ヴィッキイ・バウムの小説「ホテルの人びと」を原作にして、エドマンド・グールディング監督が映画化した1932年のアメリカ映画

第5回アカデミー賞で作品賞を受賞した

同一場所に集った複数の人物を同時進行的に描く群像劇を、映画では「グランドホテル方式」と言うが、その名前の由来であり、元祖と言われるのが、この作品だ。後に数えきれない映画でグランドホテル方式は使われていて、今では珍しくないけど、やはり元祖の偉大さは計り知れない。日本ではこの作品の影響を受けた三谷幸喜の「THE 有頂天ホテル」なんかがグランドホテル方式の解りやすい例だね。

ホテルという舞台で様々な人の人生が交錯する様を描いているんだけど、30年代とは思えないエドマンド・グールディング監督の巧みな演出で、コミカルかつ流れるように物語が進んでいくから、頭を悩ませることもなく素直に楽しめる。アカデミー賞で作品賞だけにノミネートされて作品賞だけを受賞した唯一の作品というのも、当時としては斬新な群像劇だったからだろう。

メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)製作の作品で、当時のMGMのオールスター・キャストということで話題になった。ロシア人バレリーナを演じたのは、初期ハリウッドの伝説的スターであるグレタ・ガルボ。スクリーンから放つ彼女の魅力は唯一無二のものがある。36歳で引退してから1度も公の場に出てこなかったというから、彼女は美しいままスクリーンに生き続ける。

速記者を演じたジョーン・クロフォードもMGMのスター女優で、グレタ・ガルボと牽制しまくり、1度も現場で顔を合わせなかったから、2人で映るシーンはない。男爵を演じたジョン・バリモアと老会社員を演じたライオネル・バリモアの兄弟の演技はこの作品を支えている。ちなみに、ジョン・バリモアは女優ドリュー・バリモアの祖父。

映画でも何でも、元祖というものは面白い。その後の作品はどんなに面白くても模倣したことになるし、元祖だけが持つ神聖さは、元祖でしか味わえない。今では多くの映画で使われているグランドホテル方式の元祖である「グランド・ホテル」。これは観ておくべきでしょう。
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