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グランド・ホテルのTSのレビュー・感想・評価

グランド・ホテル(1932年製作の映画)
3.8
【同時に展開する様々なドラマ】81点
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監督:エドマンド・グールディング
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ
収録時間:116分
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第5回(1933)アカデミー賞作品賞受賞。
様々なドラマを同時に映す技法を「グランドホテル式」などと言いますが、その語源にもなったのが今作です。文字通り、高級ホテルであるベルリンのグランドホテルにおいて、様々な人間ドラマが展開されます。どこが良いかというよりかは総合的に優れている作品。これといって奇想天外な展開はないですが、なかなか話に入りこんでしまう作品です。

ベルリンにある人気高級ホテル、「グランドホテル」。ある男は金が足りずに宝石を盗もうとし、ある女はある男のタイピストとして勤務し、ある男はこのホテルで豪華なひと時を過ごそうとする。今作はその一連の出来事を映したものであるのだが。。

まず今作を仕上げるにあたって苦労した逸話が興味深いです。なんと、今作の主人公級であるグレタ・ガルボとジョーン・クロフォードは一度たりとも同じスクリーンに映らないのです。これには訳がありまして、クランクインする直前に二人が睨みあったからだそうです。やはり女性同士のライバル心は凄いといいますか、片方の撮影が終了してから撮影に入ったそうです。まるで子どもの意地の張り合いみたいですが、当時の大物女優のプライドがあったのでしょう。そんな中仕上げた今作は多大に評価され、アカデミー賞まで受賞しているのですから大したものです。当時斬新であったこの映し方は、後世の映画にもかなりの影響を与えました。主人公は一人とは限らない。数人いてもおかしくない。ある意味それまでの固定概念を破ってくれた作品であるのかもしれません。

内容としても面白く、特に病気で先が長くないクリンゲラインの爽快さがある意味よかったです。人は先が長くないと知ったらあそこまで自由になれるのか。雇い主の戯言なんて怖くない。若干、資本主義からの解放を謳っている存在なのではとも感じました。無論、同じ場所にいることなかった二人の女優の演技も素晴らしかったです。それにしても上流階級の男たちはエスコートが上手いもんだ(笑)

本来ならもう少しスコアは下ですが、なんとも言えぬ満足感がありましたし、何よりも一度聞いたら忘れられそうにない製作エピソードも面白かったですからこのスコアにしました。クラシックにやや慣れていないと退屈してしまうかもしれませんが是非たくさんの人に見て欲しい作品です。
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