ツクヨミ

フェイシズのツクヨミのレビュー・感想・評価

フェイシズ(1968年製作の映画)
3.9
熱狂な俳優演技が"自由"な映画を形成し人間関係の綻びにつながるとてつもないカサヴェテスのパワー。
特集"ジョン・カサヴェテス レトロスペクティブ"にて鑑賞、アメリカインディペンデント映画の父で多様な映画作家に影響を与えたらしいジョンカサヴェテスの作品を見に行ってみた。
まずオープニング、試写室みたいな場でたくさんの人が集まってきて今から映画を上映しますと試写会がスタートする。するとその試写している映画の中に入っていくメタい感じにニッコリする仕様。
そして本編はマジで狂乱なキャラクターたちの饗宴ですごい、本当に一切の説明もなくいろんな人物が集まってたわいもない会話をエネルギッシュ全開に爆発させていく。まさに"レイジングブル"のデニーロや"グッドフェローズ"のジョーペシがごとく凄まじい勢いで捲し立て熱で浮かされるパワーがマジでスコセッシに影響与えすぎだろ。そのパワーが直球にタランティーノやジムジャームッシュに継承されているのまで見える雰囲気もあり、マジでアメリカインディペンデントに影響大なんだなとめちゃくちゃ関心してしまった。
まあ本作、ストーリーなんてほぼ無いと言っても過言では無い。とある夫婦の2人が出会う人間模様をゆっくりしたクロスカッティングで会話劇を主に見せていく。しかもその会話もマジでたわい無いというか中身なさそうなんで、もはや俳優の熱い演技合戦が熱くその演技を見ているだけでも面白い。さすが俳優上がりの監督なだけあるし、いかに会話と演技だけで作品を見せていくかという感じは濱口竜介作品にも通づるのは確か、濱口竜介がカサヴェテスに対し"幸か不幸かはわからないが、見て後悔したことは一度もない"と言っているのには唸る。狂おしいほど熱狂し頭が追いつかないほどの会話劇に見入ってしまう。
またなんといっても即興的なカメラワークやモノクロームなクローズアップのビジュアルにも見せられる。最初のジーナローランズのショットや時折見せるキレッキレのショットもなかなかに良い。会話劇は会話劇なんだが映像としての快楽も持ち合わせているというか。あとエンディングの倦怠期夫婦ものに帰結する見せ方も簡潔で美しい。ストーリーは本当に最小限でいいし確かにシンプルさと即興さがゴダールにも影響与えてそうだなとも思う。アメリカ映画史の中でもけっこう大事そうな映画作家カサヴェテスの初体験として良い体験ができて良かった。
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