チェコのスイートな村人たちのお話。おとぎ話とは違って現実的な問題を温かい村人の知恵と人情で解決していきます。チェコ語の原題は「私の小さなリゾート村」。原題には1985年当時の腐敗した共産主義体制への批判が含まれています。
集団農場の小さな村が舞台。子どもの頃からこの村に住むオチクは両親を亡くして大きく古い田舎家に一人で住んでいます。オチクは少し障がいがあり、みんなに怒られたりもしますが、温かく見守られ、愛されていました。ハトの世話と、仕事の師匠パヴェクと農場で働くのが好き。
ある日、オチクは都会のプラハに住み、そこで農業公団の仕事をすると突然言い出します。喜ぶ人もいますが、村人たちは心配で心配で、町長、公団、隣人はしばしば話し合うのですが、これには何か裏があると思い始めます。
村人がなかなか個性派で楽しいです。オチクの仕事の直属上司パヴェクは面倒見はいいが、オチクがとんちんかんなことしたり、何も意思表示しないことに正直イラついてオチクに当たったりします。オチクはパヴェクを父親のように思っているので悲しくなってしまいます。
オチクとパヴェクの二人を軸に、村人たちが関係ないようで、誰もが関係していて、コメディ色たっぷりなヒューマンドラマになっています。
この話がここにつながっているのかと、小さな村ならではで、昔のテレビのホームドラマ(寺内~とか)みたいでした。
とくにいい味わいだったのが医師。乱暴な運転で車をすぐ壊すのに、患者への適当なアドバイスが適切で、小さいことにはこだわらない、先を見ている人。
趣ある古い家に惹かれ、村が気に入って留まった芸術家。最初はよそ者扱いでしたが、素敵な絵を描くので受け入れられます。外から来て、村の価値を相対的によくわかっている人。
都会のプラハから出向してきた公団の若者。農業の科学的知識があり、洗練されていてドライ。なのに村の若い人妻と不倫。留守中のオチクの家を密会に使用し、すぐに村中にバレバレに。DV夫にもばれる。理性と情熱を使い分けているだけで悪い人ではない。
オチクを世話する隣家のおばあちゃん。豊富な人生経験から物事の良し悪しをすぐに見抜く。もめ事は嫌いだが、正しくないことは絶対に受け入れない。オチクをいちばんよくわかっている人。
パヴェク、農場で働く道理のわかる働き者。オチクの世話を長いことしてきたが、うんざりもしている。自分だけに押し付けられた感じが否めない正直な人。
他、個性的な人びとがたくさん出てきて、小さな村は、オチクの発言から村の膿を出すことになっていきます。
美しいのどかな村の静かな民主化革命だったのかもしれません。
趣ある家屋と花咲く庭、緩やかな丘の農場。
牧歌的な風景と弱者を守る村人たちの温かさに、ラストシーンでうるっときました。
のっぽのオチクと太っちょのパヴェクの凸凹コンビに癒されました。